台湾経済が驚異的な躍進を遂げています。台湾の行政院主計総処が2020年01月21日に発表した2019年10〜12月期の実質経済成長率の速報値は、前年の同じ時期と比べて3.38%もの増加を記録しました。これは事前の予想を0.34ポイントも上回る数値であり、実に見事な結果と言えます。実に6四半期ぶりに3%の大台へ乗せた背景には、世界を揺るがす米中貿易摩擦の存在がありました。
インターネット上やSNSでも、この台湾の独走状態に対して驚きの声が相次いでいます。「周囲のアジア諸国が失速する中で異次元の強さを見せている」「蔡英文政権の経済政策が完全に的中したのではないか」といった、好意的な意見や称賛のコメントが数多く寄せられている状況です。実際にライバル関係にある韓国などが世界的な貿易摩擦の直撃を受けて低迷する中、台湾の底力がはっきりと証明された格好となりました。
好景気を牽引したのは、目を見張るほどの活発な設備投資です。この期間における設備投資などを含む「資本形成」は、前年同期比で10.72%増という驚異的な伸びを示しました。特に、世界的な半導体製造大手である台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする最先端企業が、次世代通信規格である「5G」の普及に向けた投資を劇的に増やしたことが、全体の数字を大きく押し上げる要因となっています。
中国から台湾へ!生産拠点が戻る「台商回流」の破壊力
ここで注目すべき専門用語が、中国に渡っていた台湾企業が自国へと生産拠点を戻す現象を指す「台商回流(たいしょうかいりゅう)」です。主計総処の専門委員も記者会見の席で、この回帰現象に伴う国内投資が経済成長へ大きく貢献した事実に胸を張りました。これまでアップルなどの世界的なIT巨人のサプライチェーン、つまり部材調達から製造にいたる供給網を支えていた台湾企業は、軒並み中国を拠点にしていました。
しかし、米国が中国からの輸入品に対して高い関税を課したことで、状況は一変します。米国企業側も部品の調達先を中国から台湾へと切り替える動きを加速させました。その結果、2019年の通年データでは台湾の中国向け輸出が減少した一方で、米国向けの輸出が17.2%も激増するというダイナミックな地殻変動が起きています。「台湾は貿易摩擦の受益者だ」と語る蔡英文総統の言葉通り、脱・中国依存が見事に実を結んだ形です。
私はこの現象について、台湾が地政学的なリスクをチャンスに変えた最高のお手本であると考えます。蔡英文政権が用意した補助金などの恩恵もあり、投資回帰の申請額は2019年だけで約2.6兆円にまで膨れ上がりました。2020年01月11日の総統選で圧勝し、2020年05月20日から第2期政権をスタートさせる蔡総統にとって、この経済的な成功は強力な追い風であり、自らの政策への絶対的な自信に繋がっているはずです。
今後の懸念材料となる中台関係の冷え込みと世界情勢
2020年通年の見通しも2.72%の安定成長が予測されていますが、唯一の懸念は冷え込む中台関係です。両国は2010年に実質的な自由貿易協定である「経済協力枠組み協定(ECFA)」を結び、多くの品目で関税の免除を受けてきました。しかし、中国が掲げる「一つの中国」を認めない蔡政権への圧力として、この関税優遇措置が打ち切られるのではないかという不安の不気味な影が、現地の経済界に忍び寄っています。
さらに、米中両国が貿易交渉の「第1段階」で合意したとはいえ、ハイテク分野における覇権争いは今後さらに激しさを増していくと予想されます。米中の双方からビジネスを受注して利益を上げている台湾企業にとって、米中の経済的なデカップリング、すなわち「分断」が進むことは、将来的な供給網の混乱を招くリスクでもあるのです。この先も台湾がこの勢いを維持できるのか、世界中から熱い視線が注がれています。
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