4年に一度、真冬のワシントンで開催される米国大統領就任式。そこは、世界が注目する歴史の転換点です。日本国際問題研究所理事長の佐々江賢一郎氏は、かつて外交官としてこの特別な儀式を2度体験しました。厳寒の地で行われる式典は、単なる華やかな祭典ではなく、並々ならぬ忍耐を要する現場でもあったといいます。佐々江氏が語る、式典の裏側と米国の熱気についてご紹介しましょう。
式典当日は、議事堂前の広場に外交団や議員団が着席し、長時間にわたって開式を待ちます。寒さ対策として、コートの下に何枚も厚着を重ねることが必須というから驚きです。佐々江氏は、唇を震わせ膝をガクガクさせながらも、大統領が姿を現した瞬間に広場を包み込む凄まじい歓声を感じ取っていました。新しい政権に対する国民の期待感と、張り詰めた緊張感が入り混じるその空気は、まさに民主主義の祭典といえる光景でしょう。
外交のプロが視た「米国政治のリアル」
式典の終了後、外交団はホワイトハウス近くの迎賓館であるブレアハウスで、ようやく一息つきます。ここでは、各国の外交官たちが大統領の就任演説の内容について熱い議論を交わします。例えば、オバマ大統領の2期目の演説が持つ「団結」へのメッセージや、トランプ大統領が掲げた「米国第一(アメリカ・ファースト)」という衝撃的な主義が、今後世界にどのような影響を与えるのかといった、非常に鋭い分析が飛び交うのです。
専門用語の「米国第一(アメリカ・ファースト)」とは、米国の国益を最優先し、他国との外交関係や国際合意においても自国の利益を最大化しようとする考え方です。この言葉が現実の政策として突きつけられた時、周囲の外交官たちが感じた危機感や驚きは、当時のSNSでも大きな反響を呼びました。「この演説で世界のルールが変わるのではないか」という不安と、「米国という巨大な歯車が動き出した」という興奮が、オンライン上でもリアルタイムで共有されていたことが思い出されます。
最後に行われるペンシルベニア通りのパレードでは、大統領夫妻が車から降りて沿道の人々と触れ合います。佐々江氏ご夫妻も、人々の熱狂の渦に巻き込まれ、寒さを忘れて歓声を上げたといいます。華やかなパレードの裏側には、こうした凍えるような準備や、国際情勢を左右する重圧があるのです。一人の編集者として、私は政治の本質とは、こうした「厳しい現実」と「熱狂的な理想」の狭間にこそ宿るものだと強く感じます。
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