老舗石鹸メーカーがITの知見で革新!「木村石鹸工業」が伝統製法と自社ブランドで描く未来戦略

創業九十年を超える石鹸づくりの老舗、木村石鹸工業(大阪府八尾市)が、伝統的な製造技術と革新的な経営戦略を融合させ、新たな飛躍を遂げています。家業を継いだのは、かつてIT企業を立ち上げた経歴を持つ四代目の木村祥一郎社長(四十七歳)。その手腕で、昔ながらの釜焚き製法を強みとしつつ、ネットを活用したPRや、洗練された自社ブランドへの注力によって、老舗企業に新風を吹き込んでおられるのです。

特に注目すべきは、二〇一五年から展開されているハウスケア・ボディーケアブランド「SOMALI(そまり)」でしょう。「植物オイル一〇〇パーセントの純石鹸と天然素材の固まり」という意味が込められたこのブランドは、台所用石鹸やキッチンクリーナーなどをラインナップしています。木村社長が陣頭指揮を執り、およそ一年半をかけて開発された製品は、洗浄力と透明さを両立させるため、原材料の最適な配分を徹底的に見極めた結果、誕生しました。また、生活感を抑える白地を基調としたミニマルなデザインも、現代のインテリアに馴染むと大変好評を得ています。

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「釜焚き製法」という唯一無二の伝統と価値

木村石鹸は一九二四年の創業以来、原料の天然油脂を大きな釜で加熱し、時間をかけてかき混ぜる「釜焚き製法」で純石鹸を製造し続けています。この製法は、他の製造方法と比べると時間もコストもかかり、大量生産には不向きという側面がありますが、それゆえに高い安全性が評価され、品質基準が非常に厳しい生協などに対してOEM(相手先ブランドによる生産)供給を行ってきた確かな実績があるのです。この釜焚き製法こそ、現代の大量生産時代において、他社には真似のできないニッチな付加価値となっていると考えられます。

木村社長は、かつて手間のかかる**「釜焚き製法」を、他社との差別化を図る自社の最大の特長として前面に打ち出されました。これは、IT企業で培ったウェブマーケティングの知見が活かされた、非常に賢明な戦略と言えます。社長が常務に就任された二〇一三年六月当時は七億円前後だった売上高は、自社ブランドの拡充と相まって、二〇一八年六月期には一一億七〇〇〇万円まで増加。伝統的な「ものづくり」に、ITを活用した「魅せ方」を組み合わせたことで、老舗の潜在能力が一気に開花した事例ではないでしょうか。

SNSでも大好評!「SOMALI」が支持される理由

自社ブランド「SOMALI」は、その品質とデザイン性の高さから、SNS上でも高い反響を集めています。特に、肌が敏感な方やアトピー肌の方々から「肌にやさしい」「アレルギーが出にくい」といった声が多く聞かれるようです。天然由来成分で作られた液体洗濯石鹸は、合成界面活性剤(水と油など、本来混ざり合わないものを混ぜ合わせるために用いられる成分で、洗剤の主成分です)や合成香料・着色料を使っておらず、そのシンプルな成分構成が安心感につながっています。

また、「洗剤と一緒に使用しているが、ふんわり感が気に入った」「強い香りが苦手だが、これは香りがほとんどなく良い」など、従来の柔軟剤とは一線を画す洗い上がりと香りの控えめさも、ナチュラル志向の消費者に強く支持されるポイントです。シンプルなボトルデザインについても「ボトルがかわいい」「隠さずに置いておきたい」といった意見があり、製品の性能だけでなく、生活空間を豊かにするデザイン性も高い評価を受けていることがわかります。

未来を見据えた「スタジオ・プロジェクト」と事業構造改革

木村石鹸は、自社ブランドの成長を加速させるため、二〇一九年九月には三重県伊賀市に新たな工場を完成させる予定です。七つの釜を設置し、家庭用品や化粧品を生産するこの施設を、木村社長はあえて工場とは呼ばず「スタジオ・プロジェクト」と名付けられました。このプロジェクトには、単に製品を生産するだけでなく、施設内に見学通路やスタジオを備え、「製品だけでなく『楽しい』をつくりたい」という、社長の未来への想いが込められています。

木村社長は今後、OEMの家庭用・業務用と自社ブランドの売上高を三分の一ずつ、バランス良く稼げる体制を目指すとお話しです。これは、伝統的なOEMで安定した基盤を維持しつつ、自社ブランドで市場での存在感と収益性を高めていくという、老舗が現代の市場で生き残るための理想的な事業構造改革**ではないでしょうか。伝統の技術を核に、ITで培ったセンスと革新的な発想で未来を切り拓く木村石鹸工業の挑戦は、他のミドル企業にとって、大いに参考になるモデルケースとなるでしょう。

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