2019年6月4日の東京外国為替市場では、歴史的な円高・ドル安の波が押し寄せました。その勢いは凄まじく、対ドルで一時1ドル=107円台後半という、約5カ月ぶりの水準にまで円が急上昇したのです。この動きの背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備理事会)による利下げ観測が強く影響していると考えられます。利下げとは、景気の過熱を抑えたり、逆に景気を下支えしたりする目的で、政策金利を引き下げることです。アメリカが金利を下げるかもしれないという見通しが、ドルを売って円を買う動きを加速させていると言えるでしょう。
大和証券の亀岡裕次氏は、この現象を「米金利低下を受けたドル安・円高」として明確に指摘しています。具体的には、前日の2019年6月3日の米国市場で、経済の先行きの不安を示すシグナルが出たため、安全資産とされる国債に資金が集まり、米10年物国債の利回りが急低下したことが決定的な要因です。利回りとは、国債に投資して得られる収益率のことで、これが低下するということは、国債の価格が上昇していることを意味します。この利回りは一時2.06%を付け、これは実に約1年9カ月ぶりの低水準でした。
さらに懸念すべきは、長短金利の逆転、いわゆる「逆イールド」が広がっている点です。これは、一般的に長期金利(ここでは10年物国債の利回り)が短期金利(ここでは米3カ月物国債の利回り)を下回る異常事態を指し、過去の経験則から景気後退の兆候として強く警戒されています。この逆イールドの拡大が、投資家心理を冷やし、より安全な円へと資金を向かわせているのでしょう。このため、日本の市場でも国債が買われ、2019年6月4日の東京市場で10年物国債の利回りは一時マイナス0.110%と、約2年10カ月ぶりの水準まで低下しました。
ただし、金利の低下余地という観点から見れば、日本よりも米国の方が大きいのが現状です。この日米金利差の縮小は、今後も円高を進行させる大きなリスク要因として残ると見られます。金利差とは、二つの国の金利の差のことで、これが縮まると、金利の高い通貨で運用するメリットが薄れ、金利の低い通貨(ここでは円)が買われやすくなるのです。この急速な円高は、私たち日本経済、特に輸出産業に深刻な打撃を与えるでしょう。
たとえば、海外売上高の比率が高い自動車や電機といった輸出産業の収益は、円高によって大幅に圧迫されてしまいます。トヨタ自動車の場合、この時点では1ドル=110円を想定為替レートとしていましたが、対ドルで1円でも円高が進むと、営業利益が400億円も押し下げられると試算されています。想定為替レートとは、企業が業績予想を立てる際に仮定する為替レートのことです。市場の緊張感は高まっており、「このまま円高が進めば、日本の製造業の業績に響くのではないか」という不安の声がSNSでも相次いでおり、今後の政府・日銀の対応にも注目が集まっています。
コメント