深刻な人手不足と人件費の上昇という厳しい現実に直面しているコンビニエンスストア業界において、公正取引委員会(公取委)が、本部と加盟店の取引実態に関する大規模な調査を検討していることが、2019年6月5日までに明らかになりました。この動きは、加盟店側から高まる「24時間営業の見直し」を求める声が背景にあります。公取委の狙いは、取引上、圧倒的に強い立場にある本部が、加盟店に対して一方的に不利益を押しつけていないかを把握することにあります。
特に焦点となるのは、コンビニエンスストア本部と独立した経営者であるオーナーが結ぶ「フランチャイズチェーン(FC)契約」における、24時間営業の見直しに関する話し合い、すなわち「協議」がどのように行われているかの実態です。もし、オーナーからの見直し要請に対して本部側が正当な理由なく一方的に拒否するようなことがあれば、それは「独占禁止法」(独禁法)に違反する可能性も排除できないと、山田昭典事務総長は言及しています。独禁法とは、公正で自由な競争を促進し、経済の健全な発展を目的とした法律です。本部がその優越的な地位を利用して加盟店に不当な要求をすることは、この法律で規制される対象となるのです。
この実態調査は、早ければ2019年夏にも実施される方針で、加盟店のオーナーに向けてアンケートを送る形式が想定されています。公取委はほぼ毎年、特定の業界を対象に実態調査を行っており、コンビニ業界への調査は過去にも実施された実績があります。今回の調査が実現すれば、実に3回目となるのです。これは、社会的な関心の高まりと、業界内に根深く残る取引上の問題が存在することを示していると言えるでしょう。
背景には、2019年2月に大阪府東大阪市のセブン-イレブン・ジャパンの加盟店オーナーが、本部の同意を得られないまま営業時間の短縮に踏み切り、本部と激しく対立した一件があります。この行動は、人手不足と人件費の高騰に苦しむ他のオーナーたちの共感を呼び、大きな波紋を広げました。公取委のアンケートでは、実際にどれくらいの加盟店が営業時間の見直しを要請しているのか、そしてその要請がどれだけ本部に応じてもらえているのかという具体的な状況を尋ねる方向で検討が進められています。
フランチャイズオーナーが苦しむ多角的な問題に切り込む
24時間営業の問題以外にも、調査項目となる可能性が高いのは、コンビニ大手が同一地域に集中して店舗を出す「ドミナント戦略」の実態です。ドミナント戦略とは、特定の地域に集中出店することで物流や宣伝の効率を高める戦略を指しますが、都市圏などでは加盟店同士の競争を激化させ、オーナーの経営を圧迫する要因となりつつあります。このため、競争の激化から逃れるための対策を求める声がオーナー側から強くあがっているのです。
さらに、加盟店が本部に支払う「ロイヤルティー」の実態、そして、加盟店が独自に商品の価格を下げる「値引き販売」に対する本部による制限の有無も、調査の対象となりそうです。ロイヤルティーとは、フランチャイズ本部が商標の使用許可や経営指導などに対して加盟店から徴収する対価のことです。これらの取引条件が公平な競争を阻害していないかを検証することで、本部と加盟店の健全な関係を構築することが期待されます。
もちろん、今回の実態調査で、個別の案件について直ちに独占禁止法違反の判断が下されるわけではありません。しかし、調査の回答結果を綿密に分析し、もし独禁法に違反した行為があるという疑いが強まれば、公取委は特定のコンビニ本部を個別に審査し、独禁法を適用して厳しく対処する可能性も視野に入れています。コンビニエンスストアの問題に対する社会的な関心が高まっている今、公取委にとって、不公正な取引の是正に厳正に取り組む姿勢を示す格好の機会となるでしょう。
ただし、公取委の内部からは、「すでに独禁法違反となる可能性についての見解は十分に示しており、これ以上の調査が必要なのか」という慎重な意見も出ているようです。公取委は、こうした様々な意見を踏まえた上で、今年の調査対象をコンビニ業界にするのかどうかについて、最終的な判断を下すことになります。私たちの生活に欠かせないコンビニエンスストアの裏側で繰り広げられる、本部と加盟店の力関係を巡る公正な競争への問いかけは、今後も注視していく必要がありそうです。
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