中小企業の経営者の間で急速に普及していた、法人契約の「節税保険」をめぐる課税ルールの見直しが大きな局面を迎えています。特に、これまで法人税通達で特定の要件下で全額損金算入が認められていた「がん保険」の取り扱いが、今、最大の焦点として浮上しているのです。
国税庁は2019年4月に課税強化の方針を打ち出しましたが、その後の業界の反響を受け、この問題に関する最終的な判断を下すため、まずは実態調査を行うことになりました。具体的な動きとして、国税庁は6月13日までに20社強の生命保険会社との意見交換会を開催し、がん保険などの契約がどのように行われているか、その実態を把握するためのアンケートを実施する意向を伝えています。
「節税保険」とは、企業が保険料を支払うことで、それを損金(会計上の費用)として計上し、法人税の課税対象となる利益を圧縮できる保険商品の総称です。特に問題視されていたのは、経営者の万一に備える保険でありながら、一定期間後に解約すると、それまでに支払った保険料のほとんどが解約返戻金として企業に戻ってくるという特性を持つ商品でした。これにより、税金を繰り延べたり、事実上の利益を留保したりする目的で、解約を前提とした販売が過熱していたのです。
これまで全額損金が認められていた「がん保険」の特例とは
今回の課税見直しの動きの中で、なぜ「がん保険」がクローズアップされているのでしょうか。これまで、国税庁は福利厚生を目的として企業が契約し、経営者や従業員が被保険者となるがん保険について、返戻金(解約時に戻ってくるお金)がない場合に限り、支払った保険料の全額損金算入を例外的に認める法人税通達を2012年に出していました。この通達は、万一の疾病に備えるための保険という側面を重視した措置と言えます。
しかし、生保各社がこの特例を“活用”する形で、商品戦略を大きく転換したことが、今回の課税強化検討の引き金となりました。具体的には、アフラック生命保険やネオファースト生命保険などが、終身契約のがん保険でありながら、保険料の支払期間を従来の終身払いから2年や3年といった短期払いに改定したのです。
終身払いであれば年間数万円程度だった保険料が、短期払いにすることで年間数百万円にも跳ね上がります。これを全額損金として計上できるとなると、短期間で一気に大きな節税効果を得られることになり、生保業界内での販売競争は激化しました。こうした実態は、当初の「福利厚生」という目的から逸脱し、「利益の圧縮」という色彩を強めていると国税庁は捉えたのでしょう。
SNSでも注目される課税強化!編集者の見解と今後の動向
今回の国税庁による大規模な課税見直しへの動きは、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。「ついに国税庁が動いたか」「保険会社のイタチごっこも終わりそう」といった、ルールを厳格化することに賛同する声が目立ちます。一方で、純粋に役員や従業員の保障を手厚くするために法人契約を利用していた中小企業経営者からは、「本当に必要な保険まで影響を受けないか心配だ」という不安の声も上がっているようです。
私見ですが、企業の税制対策は合法的な範囲で行われるべきですが、本質的にリスクに備えるための「保険」という商品の特性が、過度な節税スキームとして利用されることで歪められてしまうのは健全ではありません。国税庁が今回、大規模な実態調査に乗り出したのは、税制と市場の公平性を保つ上で極めて重要な一歩だと考えられます。
国税庁は、4月の方針示達ではがん保険を含む第三分野商品(医療・がん・介護など)も一律に課税強化するとしていましたが、生保業界からの強い要望もあり、今回の調査結果を踏まえて改めて判断することになります。この調査結果、そして国税庁が下す最終的な判断は、今後の保険会社の商品設計や販売戦略に極めて大きな影響を与えることになるでしょう。中小企業経営者はもちろん、生命保険のセールスに関わるすべての方が、この動向を注視する必要があると言えます。

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