中東のエネルギー情勢に大きな激震が走りました。世界最大級の産油国として知られるサウジアラビアにおいて、石油政策の舵取り役であるエネルギー相に、サルマン国王の息子であるアブドルアジズ・ビン・サルマン王子が新たに任命されたのです。2019年09月11日、アブダビでの発表により明らかになったこの人事は、同国の歴史において極めて異例な出来事として注目を集めています。
これまでサウジアラビアのエネルギー相ポストは、王族以外の技術官僚が務めるのが通例であり、王族がこの重要ポストに就くのは今回が初めてのケースとなります。アブドルアジズ王子は長年にわたり石油行政に携わってきた実務派として知られていますが、国王の血縁者が直接エネルギー政策を指揮するという事実は、サウジ政府がこれまで以上に石油市場への関与を強める決意の表れだと言えるでしょう。
SNS上では、この劇的な交代劇に対して「サウジの本気度が伝わってくる」「原油価格の底上げを狙った攻めの人事だ」といった驚きの声が相次いでいます。その一方で、王族が直接表舞台に立つことで、政策の失敗がそのまま王室の評価に直結するリスクを懸念する意見も散見されました。投資家たちの間でも、この交代が国際的な原油供給量にどのような変化をもたらすのか、固唾をのんで見守る状況が続いています。
協調減産の強化とシェールオイルという壁
新大臣に課せられた最大のミッションは、低迷する原油価格を押し上げ、安定させることに他なりません。そのためには、サウジが主導権を握る石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなどの非加盟産油国が手を取り合う「協調減産」の維持と強化が不可欠です。協調減産とは、市場に出回る石油の量を意図的に絞ることで、供給過多を防ぎ価格を維持しようとする国際的な取り組みを指します。
しかし、価格の引き上げを狙うサウジアラビアの前には、強力なライバルが立ちはだかっています。それは、最新の技術によって米国で増産が続く「シェールオイル」です。シェールオイルとは、地下深くの硬い岩石層(シェール層)から抽出される原油のことで、この台頭により米国は世界トップクラスの産油国となりました。サウジが供給を絞っても、米国産がその隙間を埋めてしまうため、価格を操作することは容易ではありません。
編集者としての視点ではありますが、今回のアブドルアジズ王子の就任は、単なる人事業務以上の「背水の陣」を感じさせます。サウジは国営石油会社サウジアラムコの株式上場を控えており、企業価値を高めるためにも原油高を維持したいという切実な事情があるはずです。しかし、自由市場の原理で動く米国産シェールとの競争は、伝統的なカルテルの手法だけでは太刀打ちできないフェーズに入っていると推測されます。
今後の展望として、王子がどのようにロシアとの連携を深め、なおかつ米国の増産圧力に対抗していくのかが焦点となるでしょう。2019年09月11日という日付は、サウジの石油戦略が「官僚主導」から「王室直轄」へと明確にシフトした転換点として、後の歴史に刻まれるかもしれません。市場の期待と不安が入り混じる中、新大臣による大胆な一手が待たれるところです。
コメント