日本のものづくりを根底から支える「金型」。その心臓部とも言える精密部品の世界で、いま一人の若きリーダーが舵取りを担おうとしています。2019年11月1日、パンチ工業の新たな顔として就任した森久保哲司社長です。42歳という若さ、そして創業者の長男という背景を持ちながらも、その歩みは徹底した「現場主義」に貫かれていました。
森久保氏のキャリアは、2003年の入社直後、岩手県にある宮古工場への配属から幕を開けます。そこで叩き込まれたのは、高品質な製品をいかに迅速に世に送り出すかという「工程管理」の神髄でした。SNS上でも「現場を知るトップは信頼できる」「金型部品という地味ながら重要な分野に若き風が吹くのは楽しみ」といった、期待を込めた反響が広がっています。
世界中の製造現場をその目で見てきた「裏側まで知る男」
パンチ工業の最大の武器は、顧客の要望に合わせて一点一画から作り上げる「特注品」への対応力にあります。一つの図面から複雑な製造の道筋を描く「工程設計」こそが、利益を生む源泉です。森久保氏は宮古での経験を皮切りに、中国で3年、再び岩手で4年、さらに兵庫での新工場建設プロジェクトと、まさに製造の最前線を渡り歩いてきました。
さらに足跡はマレーシア、ベトナムといった海外拠点にも及びます。「自社の製造現場は裏側まで知り尽くしている」と断言する言葉には、圧倒的な自負が滲みます。このように国内外の拠点を文字通り肌身で知るトップの存在は、複雑なサプライチェーン、すなわち「製品が消費者に届くまでの供給網」を最適化する上で、これ以上ない強みとなるでしょう。
米中摩擦の向かい風を「原点回帰」の好機に変える
2019年11月29日現在、世界の経済環境は決して楽観視できるものではありません。深刻化する米中貿易摩擦の影響により、日米欧中の全市場で減速感が強まっています。しかし、森久保氏はあえてこの「向かい風」を歓迎する構えを見せています。危機的な状況こそ、全社員がコスト競争力への危機感を共有し、組織の足腰を鍛え直す絶好のタイミングだと捉えているのです。
私は、森久保氏が掲げる「ものづくりと営業力という原点への回帰」こそ、成熟した日本企業が世界で勝ち残るための唯一の正解だと確信しています。価格競争が激化する中で、日本独自の細やかな技術力と、それを世界に届ける泥臭い営業力を再定義できるのは、現場の苦労と喜びを誰よりも知る彼のようなリーダーに他なりません。
私生活では、海外生活を経て改めて「日本の美徳」に目覚め、神社巡りがブームだという親しみやすい一面も持つ森久保氏。急逝した前社長の意志を継ぎ、混乱の中で社長の座に就いた彼ですが、その瞳はしっかりと未来を見据えています。パンチ工業が「日本が世界に誇る金型の守護神」としてどう進化を遂げるのか、その手腕から目が離せません。
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