2019年11月21日、ビジネスの根幹を揺るがす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の波が、いよいよ企業の管理部門、特に人事の領域にまで本格的に到達しています。これまでの人事業務といえば、事務作業や効率化が主な焦点でした。しかし、テクノロジーの飛躍的な進化によって、膨大なデータを戦略的に活用し、事業そのものに直接貢献できる環境が整いつつあるのです。
なかでも注目すべきは、「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」という考え方でしょう。これは社員が組織で得るあらゆる体験価値を指す言葉です。かつてのような「自己犠牲を払って顧客に尽くす」という価値観は、もはや過去のものとなりました。現在は、社員が生き生きと働くことで生まれる感動や革新こそが、顧客満足度である「カスタマーエクスペリエンス(CX)」を向上させるという、ポジティブな循環が求められています。
SNS上でも、「社員を大切にしない企業に良いサービスは作れない」といった声が多くの共感を集めています。こうした時代の変化を背景に、感覚や経験だけに頼るのではなく、客観的な数値を根拠にする「データドリブン」な手法への関心が高まりました。データを可視化することで、どのような要素がEXやCXを左右しているのかを論理的に解明し、より精度の高い施策を打つことが可能になるのです。
AIがキャリアを支援?進化する人材マネジメントの新潮流
人材の採用から配置、育成、そして退職の抑制に至るまで、データ活用はあらゆるプロセスを劇的に変えつつあります。例えば、先進的な事例が多い米国では、AIが個々の特性を分析し、最適な学習機会をレコメンドするシステムが普及しています。これは単なる管理ツールではなく、社員が自らの成長のために自発的にデータを利用し、入力したくなるような使い勝手の良いインターフェースが特徴です。
日本国内でも、インターネット関連企業を中心に、社員の個性やスキル、チームの相性などをデータベース化する動きが加速しています。データに基づいた「活躍の可能性が高い部署」への配属や、本人の成長度合いの可視化は、キャリア形成の強力な後押しとなるでしょう。さらにソフトバンクでは、仕事や健康面など12項目をアプリで手軽に測定する仕組みを導入し、社員のコンディション維持に努めています。
こうした取り組みは、人事が「管理する側」から「価値を提供する側」へと、その役割を再定義している証拠だといえます。最新のテクノロジーは10年前と比較しても導入のハードルが低く、小さな実験から始めることも容易になりました。不確実な時代だからこそ、失敗を恐れずデータ活用に踏み出す姿勢が、企業の競争力を左右するのではないでしょうか。人事が変われば、会社はもっと面白くなるはずです。
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