かつて10年後の長期ビジョンを策定する重責を担った際、私は「未来を予測するための軸」をどこに置くべきか深く思索しました。過去の予測と現実を照らし合わせてみると、経済予測の多くは外れ、工学系の科学技術は的中、生命科学は五分五分という結果でした。しかし、驚くほど正確に未来を言い当てていた指標が一つだけ存在します。それが「人口動態予測」です。
日本の出生率は1973年ごろの2.14から低下の一途をたどり、2005年の1.26以降は横ばいが続いています。一方で平均寿命は延び続け、世代構成の変化がもたらす影響は、今や避けては通れない現実となりました。2019年12月02日現在、私たちが直面している人口減少の波は、日本の経済力や社会保障制度に対して、かつてないほど明確な影を落としているのです。
現在の日本の社会保障負担は、全体で年間124兆円という膨大な規模に達しています。この内訳を紐解くと、雇用者が34兆円、被保険者本人が38兆円、そして国家予算が34兆円を分担して支えている状況です。年金や福祉と並び、大きな比重を占めるのが39.6兆円に及ぶ医療費であり、その中には約10兆円規模の医薬品代が含まれています。
急速な高齢化の影響により、社会保障費は経済成長を上回るスピードで膨らみ続けています。仮に18歳から64歳までの現役世代全員が働いて高齢者を支えるとしても、現在は2.2人で1人を支えている状態ですが、2040年にはわずか1.5人で1人を支えなければなりません。このままでは、私たちが誇る日本の社会保障制度は維持できなくなるでしょう。
しかし、希望は残されています。もし65歳から74歳までの方々の半分が、健康を維持して働くことができれば、現在の制度水準を守ることは可能です。単なる節約といった守りの姿勢だけでなく、積極的な打開策が必要不可欠です。SNSでも「健康寿命を延ばすことこそが最大の貢献」という声が上がっており、元気なシニア層の活躍に期待が集まっています。
ここで重要になるのが、革新的な医薬品が果たす役割です。病に苦しむ人々を回復させ、再び元気に社会へ復帰させる薬を数多く開発することこそ、製薬企業の使命に他なりません。私個人の信念としても、優れた薬を生み出すことは、今の私たちから子や孫の世代へ贈ることができる、何よりも貴重な「未来への贈り物」になると確信しています。
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