財務省が2019年12月02日に発表した法人企業統計は、日本経済の現在地を鮮明に映し出す内容となりました。金融・保険業を除いた全産業の売上高は、前年同期と比較して2.6%減の349兆4974億円を記録し、実におよそ3年ぶりにマイナスへ転じています。企業の収益力を示す経常利益も5.3%減の17兆3232億円に留まり、2期連続で前年を下回る結果となりました。ネット上では「ついに景気後退の波が来たか」と先行きの不透明感を懸念する声が目立っています。
今回の業績悪化の背景には、激化する米中貿易摩擦による中国経済の失速が色濃く影を落としています。特に製造業へのダメージは深刻で、情報通信機械が18.9%減、金属製品も15.4%減と大幅な減収に見舞われました。卸売業においても、原油価格の下落が販売額を押し下げる要因となっています。10月の増税を前にした家電製品などの「駆け込み需要」も期待されましたが、小売業全体をプラスに転じさせるほどの爆発力は欠いていたというのが実情でしょう。
その一方で、未来への投資意欲が衰えていない点は唯一の希望と言えるかもしれません。ソフトウエアを含む設備投資額は7.1%増の12兆826億円に達し、なんと12期連続でのプラス成長を維持しています。これは、企業が目先の減収に動揺せず、中長期的な競争力を維持しようと奮闘している証拠です。SNSでも「この投資が将来の雇用や給与に繋がってほしい」といった、企業の攻めの姿勢を前向きに捉える書き込みが散見されます。
5Gと都市開発が牽引する「攻めの投資」の背景
好調な設備投資を支えている主役は、次世代通信規格「5G」に関連する需要です。5Gとは、現行の4Gを遥かに凌ぐ超高速・大容量・低遅延の通信を実現する技術を指します。製造業では、この新時代の到来を見据えた通信機械向け電子部品や、自動車の電動化に対応する生産能力の増強が活発化しました。また、非製造業に目を向ければ、ネット通販の拡大に伴う物流施設の整備や、都心部におけるオフィスビル建設のラッシュが投資額を大きく押し上げています。
しかし、利益面では依然として厳しい向かい風が吹き荒れています。製造業の経常利益は15.1%の大幅減となり、これで5期連続のマイナスとなりました。前年に比べて外国為替相場が「円高」傾向に振れたことで、自動車産業を中心に海外で稼いだ利益が目減りする「為替差損」が発生したことも手痛い打撃です。また、通信業界ではスマートフォンの料金引き下げ議論が収益を圧迫する要因となっており、官民双方の動きが企業の懐事情に影響を与えています。
今回の統計結果を俯瞰すると、売上の減少という現実を認めつつも、決して悲観しすぎる必要はないと私は考えます。経常利益は減少したとはいえ、7~9月期としては過去3番目に高い水準を保っているからです。企業が蓄えた体力を削りながらも5Gなどの先端分野へ資金を投じている現在は、まさに「変革の過渡期」にあると言えるでしょう。世界情勢に左右されない強固な産業基盤を築けるかどうかが、令和の日本経済が再び輝きを取り戻すための分水嶺になるはずです。
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