かつてマンチェスター・ユナイテッドで黄金時代を築き上げたアレックス・ファーガソン氏は、歴史家への転身を考えたほどの知性派として知られています。彼が提唱する歴史学説によれば、巨大な帝国は外敵に滅ぼされるのではなく、常に「内部の弱点」から崩壊していくそうです。
2019年11月20日現在、この予言を証明するかのような現象が欧州サッカー界を揺るがしています。長らく君臨してきたバイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリード、バルセロナといったメガクラブたちが、かつての圧倒的な支配力を失い、苦戦を強いられているのです。
名将が残した大きすぎる影と組織の混迷
ファーガソン氏が2013年に勇退して以降、マンチェスター・ユナイテッドは混迷を極めています。27年もの長期政権がクラブの細部まで彼の色に染め上げてしまったため、後継者たちが何をしても偉大な前任者と比較され、疑念の目を向けられるという呪縛に陥りました。
カリスマを失った組織は、モウリーニョ氏やファンハール氏といった実績ある指揮官を招き、巨額の資金で補強を繰り返してきました。しかし、フロントと現場の足並みは揃わず、かつての常勝軍団はプレミアリーグの中位を漂うまでに衰退してしまったのが現状です。
これはビジネスの世界にも通じる深刻な教訓ではないでしょうか。カリスマ経営者の後継を内部で育てず、外部から招いた新リーダーが既存の文化を軽視すれば、組織内に不穏な空気が広がるのは必然です。サッカー界の混迷は、企業経営の難しさをも映し出しています。
世代交代の失敗が招く「帝国の自壊」
バイエルンやスペインの2強もまた、主力選手の高齢化と世代交代の停滞という課題に直面しています。「メガクラブ」とは、世界的な人気と圧倒的な資金力を持ち、常にタイトル獲得を義務付けられた特権的なクラブを指しますが、その地位も決して永遠ではありません。
レアルはクリスティアーノ・ロナウド選手を、バイエルンは「ロベリー」の愛称で親しまれたリベリー、ロッベン両選手を失いました。偉大な個人の穴を埋めるのは容易ではなく、チームの代謝が遅れればベテランの反発を招き、組織のきしみはさらに激しくなるでしょう。
SNS上では「ひとつの時代の終わりを感じる」といった声や、「若手の抜擢を急ぎすぎるとバランスが崩れる」という懸念が飛び交っています。バルセロナによるネイマール選手復帰の動きも、既存の序列を壊すリスクを孕んでおり、再興への道は険しいと言わざるを得ません。
無敵を誇った帝国が、自らの重みに耐えかねて崩れていく様子は、まさにファーガソン氏が説いた歴史の真理そのものです。栄枯盛衰のことわりの中で、これらのメガクラブが再び輝きを取り戻せるのか、私たちは今、歴史の転換点を目撃しているのかもしれません。
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