愛くるしい仕草や表情で、日本でもペットとして爆発的な人気を誇るコツメカワウソですが、その裏側では深刻な悲劇が繰り返されています。ワシントン条約の締結国会議により、2019年11月26日からコツメカワウソの国際取引が原則として全面的に禁止されることになりました。これは、野生個体の絶滅を食い止めるための極めて重要な決断と言えるでしょう。
しかし、主要な供給国の一つであるタイでは、今もなお密売が止まりません。2019年10月下旬、タイ南部のパッタルン県において、コツメカワウソ18匹を不正に売買しようとした男らが逮捕されました。驚くべきことに、押収された個体のうち11匹はまだ目も開いていない赤ちゃんでした。無理やり箱に詰め込まれた彼らの姿を想像すると、胸が締め付けられる思いです。
SNSに潜む「見えない」密売ネットワークの脅威
かつて、こうした違法な取引はバンコクの市場などで密かに行われていましたが、当局の監視強化によりその舞台はインターネット上へと移行しています。現在の密売は、FacebookなどのSNSを通じて、偽名を使った「面識のない者同士」で完結しているのが実態です。このつながりの緩さが、警察や捜査当局による全容解明を阻む大きな壁となって立ちはだかっています。
「SNSでの取引は麻薬を売るよりも難しい」という市場関係者の声もありますが、匿名性の高いネット空間では、誰が仕入れ、誰が客なのかを特定するのは容易ではありません。ネット上には「飼い主の会」と称するグループが存在し、秘密裏に繁殖させた個体を近隣国から調達しているケースも確認されています。彼らは法の強化を嘲笑うかのように、水面下で活動を続けているのです。
ここで注目すべきは、日本での異常な価格高騰です。現地では1匹約1万2600円程度で取引されるカワウソが、日本では100万円近い値が付くことも珍しくありません。この莫大な利益が、密輸リスクを冒してでも日本へ運ぼうとする動機を生んでいます。SNSでは「可愛いカワウソと暮らしたい」という純粋な憧れが、結果として密売組織を潤わせているという皮肉な現実が浮き彫りになっています。
失われる野生の楽園と、私たちに求められる倫理
野生のカワウソが暮らすタイ南部のナコンシタマラート県では、宅地開発によって彼らの住処が急速に奪われています。現地住民からは「昔に比べて姿を見なくなった」という悲痛な声が上がっており、生息地の破壊と密猟という二重の苦しみが彼らを追い詰めています。いくら政府が罰則を強化しても、需要がある限り供給が止まることはないという厳しい現実があるでしょう。
私たちは、その「可愛い」という感情の先に何があるのかを真剣に考えるべきです。動物を愛でる文化は素晴らしいものですが、それが野生種の絶滅を加速させては本末転倒です。2019年11月26日の取引禁止を機に、私たちはペットブームの影に隠れた命の搾取に終止符を打つ必要があります。メディアとしても、この問題が風化しないよう、注視し続ける覚悟でございます。
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