ミレニアル世代が住宅市場を変える?米国で進む「所有から利用へ」の波と価格下落の真相

2019年12月11日のニューヨーク市場は、静かな緊張感に包まれています。前日のダウ工業株30種平均が小幅な続落を見せるなか、投資家たちの視線は本日発表される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果に注がれているのです。市場の調整役であるFOMCが、今後の金利政策にどのような舵取りを行うのかを見極めようとするムードが漂っています。

さらに、2019年12月15日に期限が迫っている対中関税「第4弾」の動向も、不透明な影を落としています。こうした大きな政治・経済の節目を前に、積極的な売買を控える投資家が多いのは自然な流れと言えるでしょう。しかし、そんな膠着状態の裏側で、米国の住宅市場には「ミレニアル世代」という新たな主役による地殻変動が起きつつあります。

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活況の影で忍び寄る「販売単価下落」の正体

現在の米国住宅市場は、一見すると非常に好調です。住宅ローンの低金利に支えられ、2019年6月から5カ月連続で新築住宅の販売件数が前年を上回るなど、回復基調が続いています。2019年10月の着工許可件数にいたっては、前月比で5%も増加しており、約12年ぶりという高い水準を記録しました。

しかし、データの中身を精査すると、驚くべき事実が浮かび上がります。それは、全体的な需要は堅調であるにもかかわらず、住宅の「販売単価」が下落しているという点です。米国勢調査局が発表した2019年10月の新築住宅平均価格は、前年同月比で3%低い38万3300ドルとなり、2カ月連続で前年実績を割り込む結果となりました。

この異変を象徴しているのが、高級住宅大手のトール・ブラザーズです。同社は2019年8月から10月期の決算で市場予想を上回る利益を出しながらも、株価は一時5%安と大きく売られました。その理由は、今後の販売単価がさらに下落し、利益率が圧迫されるという見通しを経営陣が示したことに他なりません。

ミレニアル世代が求める「コンパクトで上質な暮らし」

なぜ、景気が良いはずの住宅市場で単価が下がっているのでしょうか。トール・ブラザーズのダグラス・イヤリーCEOは、その要因を20代から30代の「ミレニアル世代」の台頭にあると分析しています。ミレニアル世代とは、2000年代初頭に成人を迎えた、デジタルネイティブで価値観の多様性を重んじる世代のことです。

彼らはかつての親世代のように、過度な贅沢や巨大な邸宅を望んではいません。イヤリー氏によれば、彼らが求めるのは「上質でありながら、小ぶりで手頃な物件」なのです。この傾向を同氏は、BMWの小型車である「3シリーズ」に例えて説明しました。機能性とブランド力は維持しつつ、サイズと価格を最適化する。それが今の主流なのです。

こうした若年層の消費行動は、SNS上でも大きな注目を集めています。「無理をしてローンを組むより、賢く自分らしく暮らしたい」「広さよりも利便性やデザインを重視する」といった声が多く聞かれます。こうした「等身大のこだわり」を持つ彼らの参入が、市場全体の価格帯を押し下げる結果を招いているのでしょう。

「所有」にこだわらない世代と住宅メーカーの苦悩

住宅業界にとっての逆風は、金利の底打ち感にもあります。2018年末に4.5%台だった30年固定ローン金利は、2019年の3度の利下げを経て、9月には3.4%台まで低下しました。しかし、FRBの利下げ打ち止め観測によって、足元では3.6〜3.7%台へと反転しており、低金利によるブースト効果は一巡しつつあります。

「買わない世代」とも称されるミレニアル世代は、カーシェアリングの普及に見られるように、「所有から利用へ」という価値観のシフトを牽引してきました。彼らが重い腰を上げて住宅購入に動いている今、メーカー各社は戦略的な値引きや低価格物件の強化を余儀なくされています。これは消費者には喜ばしいことですが、企業の収益性には影を落とします。

私は、この住宅価格の下落は単なる不況の兆しではなく、社会構造の根本的な変化だと考えています。過剰な所有を美徳としない新しい世代が市場を主導することで、住宅という資産のあり方自体が再定義されているのです。企業がこの新しい価値観にどう適応していくかが、今後の米国経済の鍵を握ることになるでしょう。

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