インターネットを通じて一般のドライバーが自家用車で乗客を運ぶ「ライドシェア」。その世界最大手である米ウーバー・テクノロジーズが、2019年12月5日に衝撃的な安全報告書を初めて公表しました。そこには、2018年の1年間だけで、深刻な性的暴行の被害が3045件も報告されたという驚きの数字が記されています。
SNS上では「やはり密室になるのは怖い」「利便性は高いけれど、利用を躊躇してしまう」といった不安の声が噴出しています。一方で、「これほどの膨大なデータを隠さず公表する姿勢は、信頼回復への第一歩だ」と評価する意見も目立っており、ライドシェアという新しい社会インフラの在り方について、今まさに活発な議論が巻き起こっている状況です。
数字から読み解く安全の実態と「ライドシェア」の仕組み
「ライドシェア」とは、スマートフォンのアプリを介して、移動したい利用者と空き時間のある運転手をマッチングさせる仕組みを指します。2018年、ウーバーは米国で合計13億回という膨大な乗車サービスを提供しました。性的暴行の発生頻度は、計算上では乗車40万回に1回以下という割合になります。
この数字をどう捉えるかは非常に難しい問題ですが、注目すべきは「被害者は乗客だけではない」という点でしょう。ウーバー側の説明によれば、運転手が加害者になるだけでなく、乗客から運転手が被害を受けるケースも含まれています。誰もが被害者になり得るという現実は、プラットフォームを運営する企業にとって、極めて重い課題と言わざるを得ません。
ウーバーは現在、運転手の犯罪歴をチェックするプロセスの強化を急いでいます。その取り組みが功を奏したのか、乗車回数あたりの性的暴行の発生頻度は、2017年と比較すると改善の兆しを見せているようです。安全性への投資が、少しずつ形になって現れている時期だと言えるでしょう。
交通事故の課題と他社での深刻な事件
一方で、交通安全の側面では一進一退の状況が続いています。2018年の身体的暴行による死亡事件は9件で、前年の10件から微減しました。しかし、純粋な交通事故による死者数は58人と、前年比で18%も増加しています。走行距離あたりの死亡率は全米平均の半分程度ですが、命を預かるサービスとして楽観視はできません。
この問題はウーバーに限ったことではなく、世界中でライドシェア各社の管理体制が厳しく問われています。例えば中国の最大手「滴滴出行(ディディチューシン)」では、2018年に乗客が殺害されるという極めて凄惨な事件が相次いで発生しました。これを受け、中国当局が厳しい行政処分を下すなど、業界全体が危機に直面しています。
私は、今回の報告書公開こそが、業界を浄化する「解毒剤」になると考えています。不都合な事実を可視化することで、消費者の監視の目が厳しくなり、結果として企業はより強固な安全対策を講じざるを得なくなるからです。2年ごとの定期的なデータ開示を約束したウーバーの姿勢は、テクノロジー企業の責任の取り方として妥当な判断です。
利便性と安全性は、決してトレードオフの関係であってはなりません。スマートフォンの画面一つで車を呼べる手軽さは、現代社会に不可欠なものとなりつつあります。だからこそ、私たちが安心してドアを閉められる未来のために、ウーバーをはじめとする各社には、徹底した透明性と技術革新による安全強化を強く求めたいと思います。
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