ライドシェア最大手ウーバーが抱える成長痛:2019年第1四半期の1,100億円超え最終赤字から見えた事業の光と影

世界最大のライドシェア企業である米ウーバー・テクノロジーズが、2019年5月30日に発表した同年1月~3月期決算は、市場に大きな波紋を広げました。最終損益はなんと10億1,200万ドル、日本円にして約1,100億円という巨額の赤字を計上したのです。これは前年同期の37億4,800万ドルの黒字からは一転した結果であり、同社にとって4四半期連続の最終赤字という、厳しい現実を突きつけられた格好と言えるでしょう。

この巨額な損失の最大の要因として挙げられるのが、サービスを現場で支える膨大な数の運転手への報酬支払い負担の重さです。ライドシェアという新しい移動体験を提供するウーバーのビジネスモデルは、アプリを通じて一般のドライバーと利用客を結びつけるプラットフォーム事業ですが、その根幹をなす「人件費」とも言えるこの報酬が、収益を圧迫し続けているのです。この決算は、同年5月10日に米ニューヨーク証券取引所(NYSE)へ上場して以来、初めて開示された四半期決算という点でも、特に注目を集めました。

売上高は前年同期比20%増の30億9,900万ドルと堅調な伸びを示しましたが、その増収のペースはかつての勢いを失いつつあります。特に、世界700以上の都市でサービスを展開する中で、中国や東南アジアといった激戦区からは既に撤退を余儀なくされました。また、本国である北米市場においても、同業のリフト(Lyft)との熾烈な競争に直面しており、売上高の伸び率は1年前の69%という驚異的な数字から大幅に縮小している状況なのです。競争の激化は、やはり収益性改善への大きな壁となっていると言えるでしょう。

このような状況に対し、SNS上では「先行投資の時期だ」「ビジネスモデルの限界では?」といった賛否両論の意見が飛び交いました。特に、運転手への報酬が重荷となっている点については、「ギグ・エコノミーにおける労働者への正当な対価を考えさせられる」という議論も多く見受けられます。ギグ・エコノミーとは、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方をベースとした経済形態のことであり、ウーバーはその代表格です。しかし、その根幹であるドライバーへの配分が、かえって会社の収益を蝕んでいるという事実は、この新しい経済モデルが抱える構造的な課題を浮き彫りにしているように思われます。

部門別に業績を見ると、主力のライドシェア事業の売上高は9%増の23億7,600万ドルに留まりました。しかし、一方で全体の伸びを力強く牽引したのは、料理宅配サービスの「ウーバーイーツ」です。この部門の売上高は前年同期比89%増の5億3,600万ドルと驚異的な成長率を見せており、新しい収益の柱としてその存在感を高めていると言えるでしょう。地域別では、北米、そして欧州・中東・アフリカ(EMEA)の売上高がともに26%増と好調に推移しましたが、アジア・太平洋地域は6%増に留まり、いまだ苦戦が続いているようです。

料理宅配や貨物トラックの配車など、全てのサービスを含めた取扱高(総予約額)は34%増の146億4,900万ドルに達しました。しかし、ウーバーはこの総予約額のおよそ8割前後を、サービス提供者である運転手らに分配している構造にあります。同社の取り分である約2割のみでは、サービスの運営に必要な費用などを賄えない状況が長く続いており、本業の儲けを示す営業損益は、業績を確認できる2017年1月~3月期以降、9四半期連続で赤字から脱却できていないのが現状です。これは、ウーバーが目指すビジネスモデルが、いまだ「薄利多売」の域を脱せず、収益性の確立という点で大きな壁に直面していることを示していると、私は考えます。

この厳しい決算を受けて、ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は、2019年5月30日のアナリスト向け電話会見で、ライバル企業との競争戦略を転換する方針を明らかにしました。これまでは利用者獲得のためのインセンティブ、つまり特典や奨励金などに重点を置いていた戦略から、今後は「ブランドや製品」そのものに焦点を移しつつあると発言しました。これは、既に消費者への認知度が高いウーバーの優位性を今後発揮できる、という自信の表れでしょう。実際に、売上高や最終損益が事前の会社予想の上限に近い水準だったことを市場は好感し、決算発表後の同年5月30日の時間外取引では、ウーバー株は同日終値に比べて一時4%高をつけるなど、投資家は長期的な成長に期待を寄せている様子がうかがえます。

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