2019年12月20日、名古屋市内で開催された三菱航空機の定例記者会見は、どこか張り詰めた空気に包まれていました。水谷久和社長の口から漏れたのは、開発中の「スペースジェット」が直面している極めて厳しいスケジュールの現状です。当初、2020年半ばに予定されていた初号機の納入は、今や実現が極めて困難な情勢となっています。
SNS上では、度重なる延期に対して「日本の技術力の結晶を早く見たい」という期待と、「いつになったら飛ぶのか」という不安の声が入り混じっています。航空ファンの間では、かつてのMRJから名称を変えて心機一転を図ったはずのプロジェクトが、再び足踏みをしている現状を危惧する書き込みが目立っており、注目度の高さが伺える状況です。
設計変更の壁と安全認証の厚い門
開発責任者のアレックス・ベラミー氏は、2017年から2019年のわずか3年間で900件を超える設計改良を行ったと明かしました。特に頭を悩ませているのが、膨大な配線系の変更です。航空機には「型式証明(TC)」という、機体の設計が安全性や環境適合性の基準を満たしていることを国が証明する極めて重要なライセンスが必要不可欠となります。
近年のテロ対策の強化や、刻一刻と厳格化される国際的な安全規制への対応は、一筋縄ではいきません。このTC取得に向けた最終機体、通称「10号機」の開発も、当初予定の2019年6月から大幅に遅れて年を越すことが確実となりました。航空産業は単なる製造業ではなく、10年単位の歳月を要する極めて難易度の高いビジネスであると改めて痛感させられます。
ライバル猛追と試される販売戦略
三菱の背後には、ブラジルの強豪エンブラエルの足音が迫っています。彼らは2019年12月12日に、競合機となる「E175-E2」の初飛行を成功させました。最新の低燃費エンジンを搭載したこの機体は、スペースジェットが独占するはずだった市場を脅かす存在です。国内の航空会社からも、開発の遅れが続くなら他社機を選択肢に入れるという厳しい声が上がり始めています。
三菱航空機が勝機を見出すのは、北米市場向けの70席級モデル「M100」ですが、その成功もまずは現在開発中の機体でTCを取得することが大前提です。編集者の視点から言えば、これは一企業の課題に留まらず、日本の航空行政のノウハウ不足も浮き彫りにしています。国交省との連携をいかに加速させ、信頼を取り戻せるかが、日の丸ジェットの命運を分けるでしょう。
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