2019年12月28日、世界を揺るがす米中対立の余波が、イノベーションの聖地シリコンバレーに暗い影を落としています。元駐日米大使であり、現在は有力ベンチャーキャピタル「ジオデシック・キャピタル」を率いるジョン・ルース氏が、緊迫する現状を語りました。
ルース氏によれば、米中のハイテク覇権争いによって、シリコンバレーへの中国系人材の流入が顕著に減少しているとのことです。SNS上でも「技術の進歩に国境はないはずなのに」「優秀なエンジニアが減るのは世界の損失だ」といった悲鳴に近い声が次々と上がっています。
代替不可能な「高度人材」という名の資産
トランプ政権は安全保障を理由に、ファーウェイなどの中国企業を「エンティティ・リスト」に載せました。これは政府の許可なく米製品の輸出を禁じる禁輸リストのことで、ハイテク分野での取引を厳しく制限するものです。この影響で、スタンフォード大学への留学生も減り始めています。
ルース氏は、投資資金の不足は米国内で補えるものの、知見を持った「人材」の代わりは見つからないと警鐘を鳴らします。自由な競争こそが経済の活力(ダイナミズム)を生むべきであり、過度な保護主義がイノベーションの歩みを止めてしまうのではないかと、私は強く危惧しています。
8億人のビッグデータを持つ中国の驚異
中国の強みは、何といっても8億人を超えるネット利用者が生み出す膨大な「ビッグデータ」にあります。これを活用する力は米国を凌駕する勢いですが、ルース氏は米国が半導体や、従来のPCとは桁違いの計算速度を誇る「量子コンピューター」の分野で依然として先行していると説きます。
現在のベンチャー業界は「カネ余り」の状態にあり、未上場企業の価値が実力以上に跳ね上がるバブル的な側面も見られます。しかし、AI(人工知能)による技術革新は本物であり、市場に健全な調整が入ることで、より強固な発展が期待できるでしょう。
日本への熱い視線と「革新の地」のプライド
興味深いのは、ルース氏が日本の市場を非常に高く評価している点です。三菱商事などの大企業も出資する彼のファンドは、日本の旺盛な起業家精神に注目しています。米国が日本のような友好国との絆を深めることこそが、次世代の技術競争を勝ち抜く鍵になるはずです。
1939年の創業以来、多様な人材を受け入れてきたシリコンバレーの歴史がいま、大きな試練に立たされています。私たちは、政治的な境界線が未来の可能性を狭めてしまわないよう、注視し続ける必要があります。技術の進化を止めてはならない、それがメディアとしての私の願いです。
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