少子高齢化が進み、労働力不足が叫ばれる現代日本において、女性の社会進出は避けて通れない最重要課題です。しかし、2019年12月16日現在、立命館アジア太平洋大学の出口治明学長は、日本の公的制度そのものが女性を家庭に縛り付けていると鋭く指摘しています。SNS上でも「働きたいのに損をする仕組みはおかしい」といった悲痛な声が溢れており、多くの人々が現状のシステムに違和感を抱き始めていることが伺えます。
出口氏が問題視しているのは、主に「配偶者控除」と「第3号被保険者」という2つの制度です。配偶者控除とは、年収が一定額以下の配偶者がいる場合に世帯主の税負担を軽くする仕組みを指します。また、第3号被保険者制度は、会社員に扶養される配偶者の年金保険料負担をゼロにするものです。これらは一見すると家計を助ける優遇措置に見えますが、実は「損をしないために働く時間を抑える」という心理的なブレーキを女性にかけてしまっています。
「女性が働きたがっていない」という意見を耳にすることもありますが、それは制度によって作られた偏見に過ぎないのかもしれません。保育所に入れない待機児童問題や、働けば働くほど手取りが減るような制度が放置されている以上、働かない方が賢明だと考えるのは当然の帰結でしょう。こうした構造的な欠陥こそが、本来の希望や意欲を歪め、女性を家庭という枠組みに閉じ込めてしまっているのではないでしょうか。
工場モデルからの脱却とGAFA時代の新戦略
なぜ、このような歪な制度が定着してしまったのでしょうか。その背景には、戦後日本が突き進んできた「工場モデル」の成長戦略があります。これは男性が工場で24時間フル稼働し、女性が家事や育児を一手に引き受けるという、性別役割分業を前提としたものでした。当時はこれが最も効率的な家族の形とされ、退職まで勤め上げる「寿退社」や、子供が3歳までは母親が育てるべきという「3歳児神話」が理想として語られてきたのです。
しかし、世界経済の主役はすでに製造業から、GAFAに代表されるようなアイデアやサービスを武器にする産業へとシフトしています。現代の消費をリードするのは女性であり、作り手側にも女性が参加しなければ、市場のニーズを捉えた新しいビジネスは生まれません。供給側と需要側のミスマッチを解消するためには、もはや性別で役割を分ける旧来のモデルは通用せず、個々の能力を最大限に活かす環境づくりが不可欠だと言えます。
さらに出口氏は、広告やパンフレットなどで「夫婦と子供2人」を標準モデルとして描き続ける風潮にも苦言を呈しています。現在、日本では単身世帯が4人世帯を上回っており、多様な生き方が当たり前になっています。標準モデルから外れた人々が「なぜ結婚しないのか」といった余計な詮索を受ける社会は、非常に窮屈で不健全です。誰しもが一人の「働く個人」として尊重される社会こそが、私たちが目指すべき理想の姿でしょう。
編集者の私としても、出口氏の主張には深く共感します。もはや「専業主婦家庭」を前提とした制度設計は、多様化する現代社会のニーズに応えきれていません。個人の選択を縛るような「特をする・損をする」という議論から脱却し、誰もが自由にキャリアを選択できる土壌を整えるべきです。制度の前提を「世帯」から「個人」へとシフトさせることこそが、日本経済を再び活性化させるための最短ルートになるに違いありません。
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