大手総合商社が今、非常に大きな転換期を迎えています。人工知能(AI)などの先端技術が実用化される「第4次産業革命」の波が押し寄せ、環境への配慮が求められる現代において、商社もまた自らの姿を変革させているのです。業界のトップを走る三菱商事は、これまでの殻を破るような大胆な挑戦をすでに始めています。
その象徴とも言えるのが、デジタル技術を用いてビジネスモデルそのものを劇的に変える「DX(デジタルトランスフォーメーション)」への取り組みです。三菱商事は、食品流通の仕組みを根本から変えるための新しいシステム開発を進めており、多くの人々から大きな期待を寄せられています。
インターネット上やSNSでも、この動きに対して「商社が本気で流通を変えにきた」「食品ロスが減るのは素晴らしい試みだ」といった好意的な反響が数多く上がっています。単なる業務の効率化にとどまらず、社会課題の解決に挑む姿勢が、生活者からの共感を生んでいるのでしょう。
AIで食品ロスを削減する新時代の需要予測システム
2019年11月から、三菱商事はNTTや食品卸大手の三菱食品、そしてデジタル技術開発を担うMCデジタルなどとタッグを組み、最先端の需要予測システムの共同開発を行っています。これはコンビニのローソンなどが持つ膨大なPOSデータを分析し、商品の売れ行きを先読みする画期的な仕組みです。
ここでいうPOSデータとは、店舗で商品が売れた時間や価格、数量などをリアルタイムで記録した販売実績の情報のことを指します。この膨大なデータをAIに学習させることで、これまで人間には予測が難しかった複雑な商品の売れ行き変動を、高い精度で見極めることが可能になるのです。
このシステムが実現すれば、メーカーから小売店に至るまでの無駄な仕入れが劇的に減少するでしょう。長年の課題であった食品ロスの削減へ向けて、開発チームは2020年09月までに一部の機能を実際の現場へ導入し、実用化させる方針を掲げて力強く前進しています。
NTTや海外企業との共創で挑む産業全体のデジタル化
三菱商事の垣内威彦社長は、2019年12月に発表したNTTとの業務提携について「これからの行く末を決める重大な転換点になる」と社員へ熱く語りました。二社は共同出資会社の設立も視野に入れており、まずは食品流通分野で業界を横断するプラットフォームを構築する計画です。
さらに、この変革の波は国内だけにとどまりません。オランダの位置情報サービス大手であるヒア・テクノロジーズ社とも資本・業務提携を結び、物流の効率化へ乗り出しています。高度な位置情報を活用してトラックの配送ルートを最適化し、配送の最終区間を効率化する狙いです。
こうした動きの背景には、これまでの「投資してリターンを得る」というモデルから脱却し、自らが経営の当事者となって産業を変えていくという強い意志があります。縦割りの組織を解体し、10の事業グループへと大規模な再編を行った同社の覚悟が、この提携劇には表れています。
編集部が斬る!総合商社が「事業経営の主役」になる意義
今回の三菱商事のDX戦略は、これまでの商社のイメージを覆す素晴らしい挑戦であると私は確信しています。かつてトレーディングや投資で稼いでいた商社が、今や自ら技術と現場をつなぐ「プロデューサー」となり、産業のあり方そのものを再定義しようとしているからです。
特に、他社との「共創(共に新しい価値を創り出すこと)」を前面に押し出している点が現代的です。NTTの持つ高い技術力と、三菱商事が長年培ってきたリアルな産業の知見が掛け合わさることで、日本の停滞した生産性を引き上げる起爆剤になるのではないでしょうか。
時には投資先に対して事業撤退や再編を提言するほどの「経営者目線」を持つということは、大きな責任を伴います。しかし、リスクを恐れずに自らが社会変革の主役になろうとする三菱商事の進化論からは、これからも目が離せそうにありません。
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