社員の健康を守ることは、今や企業の成長に欠かせない重要な戦略となっています。独自のアイデアで健康経営を推進し、経済産業省などが評価する「健康経営優良法人(ホワイト500)」に3年連続で認定された大塚製薬の取り組みが、現在大きな注目を集めているのをご存知でしょうか。同社の人事部部長補佐であり、健康管理室長を務める田中静江氏へのインタビューから、その成功の舞台裏に迫ります。
すべての始まりは、2017年9月24日に発表された「大塚製薬健康宣言」にあります。世界の人々へ健康を届ける企業だからこそ、まずは働く社員自身が健やかでなければならないという、強い原点回帰の想いが込められました。SNS上でも「自社の製品理念と社員の働き方が一致しているのは素晴らしい」「こんな会社で働きたい」といった、好意的な声が多数寄せられており、企業の信頼度向上にも一役買っています。
メタボ撃退から始まった健康改革の歩み
同社が本格的に動き出したのは2000年代後半のことです。2006年に「メタボリックシンドローム」が流行語大賞のトップテンに入るなど、社会全体の健康意識が急激に高まった時期でした。社内を見渡した際に対策の必要性を痛感した同社は、2008年にメタボやその予備軍に該当する社員600人以上を集めた「ウェルネスプログラム」を始動します。これは生活習慣病の予防や改善を目指す本格的な健康増進計画です。
このプログラムでは、血液検査や体力測定のデータを基に、一人ひとりに最適な運動メニューを提案しました。社員が1年間にわたり実践内容を報告し続けた結果、参加者全体でなんと合計2トンもの減量に成功したというから驚きです。単なるスローガンに留まらず、具体的な数値として劇的な成果を出したこの試みは、社内の雰囲気を大きく変える転換点となりました。
さらに、運動を日常の習慣にするためのユニークな取り組みが、2007年から継続されている「ポカリフレッシュ」です。これは週に1回、オフィスや工場にインストラクターを招き、8分間のオリジナル体操を行うものとなっています。業務の合間に体を動かすことで、リフレッシュ効果はもちろん、職場内のコミュニケーション活性化にも繋がっていると大好評です。
禁煙や人間ドックで社員の「自走」を促す
大塚製薬の改革は運動分野だけに留まりません。2008年からは全事業所で完全禁煙を導入しており、喫煙者の割合は2013年から2018年にかけて5.5ポイントも減少しました。また、30歳以上の社員を対象にした人間ドックの無料化も実施しています。これにより、2013年に69.5%だった受診率が、2017年には89.5%にまで跳ね上がりました。胃がんの原因となるピロリ菌検査への助成なども手厚く行われています。
さらに、2017年からはグループ社員が集中する徳島エリアで、地域を巻き込んだ「徳島健康プロジェクト」も始動しました。約6000人の社員とその家族を対象に、ウォーキングイベントや食事指導を行い、自治体とも手を取り合っています。会社が健康づくりのきっかけを提供し、最終的には社員が自発的に健康行動を起こす「自走」の状態を作ることが、同社の目指す理想の形です。
今回の取材を通じて、企業が一方的に押し付けるのではなく、楽しく参加できる仕組み作りこそが成功の鍵だと確信しました。社員の健康を原動力にする姿勢は、現代のあらゆる企業が見習うべき先進的なモデルです。社員が自走を始めた大塚製薬の取り組みは、これからも多くの組織に刺激を与え続けることでしょう。
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