「過去と他人は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」という有名な言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、対人関係の心理学である「交流分析」を提唱した精神科医エリック・バーン氏が残した名言です。悩める人を励ます言葉として広く知られていますが、実はこの常識を覆す新しい視点が注目を集めています。なんと、私たちの捉え方次第で「過去も他人も変えることができる」というのです。この目からウロコの考え方に、SNS上でも「心が軽くなった」「救われる」と共感の声が広がっています。
インターネット動画配信の基盤を支える企業、株式会社Jストリームで管理本部人事部長を務める田中潤氏は、2020年1月8日の取材において、人間の「認知の力」について興味深い持論を展開しました。田中氏は、私たちが日常的に過去を美化していることに着目します。若い頃を振り返って「昔は良かった」と感じる時、辛かった記憶が薄れて良い思い出ばかりが強調されていることはありませんか。これは客観的な事実が変わらなくても、今の自分がどう受け止めるかという「認知」、つまり主観的な解釈によって、過去の意味づけが書き換わっている証拠なのです。
ストレスに負けないための「認知行動療法」のヒント
仕事で大きな壁にぶつかった時、過度なストレスから心身のバランスを崩してしまう人と、しなやかに乗り越えられる人がいます。この違いは、過酷な環境をどう捉え、どう対処するかの差にあると田中氏は指摘します。これは現代のメンタルヘルスケアで重要視される「認知行動療法」の考え方にも深く通じるものです。物事の受け止め方のパターンを少し変えるだけで、過度な負担を軽減できます。当時の苦しいプロジェクトが、後になって「自分を成長させてくれた貴重な経験」へと変化するように、認知の力は過酷な現実を生き抜く強力な武器になるでしょう。
さらにこの手法を応用すれば、苦手な他人のことすらも変えていくことが可能です。例えば、部下の業務に細かく介入する「マイクロマネジメント」を行う上司がいたとします。単に「煙たい存在」と捉えるか、「自分の大雑把な仕事ぶりを鍛え直す好機」と捉えるかで、相手の見え方は180度変わるはずです。自分の心の持ちようが変われば、上司に対するこちらの態度や行動も自然と変化します。すると不思議なことに、最終的には相手の態度までもが軟化し、現実の関係性が好転していくという好循環が生まれ始めます。
編集部が考える「生きやすさ」を手に入れるための心の柔軟性
私たちは誰もが客観的な世界ではなく、自分だけの主観的な世界を生きています。そうであるならば、自分自身が少しでも生きやすくなるように、都合よく世界を解釈した方がずっと得ではないでしょうか。しかし、この一見当たり前のような方向転換が、現実には非常に難しいものです。なぜなら、これまでの人生で培ってきた固定観念や、プライド、メンツが邪魔をしてしまうからです。大人になればなるほど、自分の「生きづらい信念」に縛られてしまいがちになります。
私は、この田中氏の提案に強く賛同します。人間関係や過去の失敗にクヨクヨ悩む時間を過ごすくらいなら、自分の都合の良いように記憶や相手のキャラクターを脳内でアップデートしてしまった方が、精神衛生上どれほど健全か分かりません。凝り固まった意地を少しだけ手放し、物事を多角的に見る柔軟性を養うことこそが、現代のストレス社会を賢く生き抜くサバイバル術と言えます。まずは目の前の嫌な出来事を、自分に有利なストーリーへと言い換える練習から始めてみてはいかがでしょうか。
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