香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は2020年1月28日に記者会見を開き、中国本土からの個人旅行の新規受け入れを全面的にストップすると発表しました。さらに、本土と連結する高速鉄道やフェリーを2020年1月30日から運休とし、航空便もこれまでの半分に減便する方針です。陸続きである中国本土との境界線で文字通り人の往来を遮断し、急速に広がる新型コロナウイルスによる肺炎の恐怖から市民の安全を確保する狙いが見て取れます。
すでに香港内では8人の新型肺炎の感染者が確認されており、2020年1月27日からは発生源とされる湖北省の居住者などの入境を拒否していました。林鄭氏は会見で「中国本土との間で人の流れをドラスティックに削る必要がある」と語り、現地で「自由行」と呼ばれる個人旅行の制限に対して市民へ理解を求めました。この措置に伴い、新幹線の終着駅である西九龍駅を含めた6つの出入境チェックポイントが完全に閉鎖される事態となっています。
2018年には年間およそ5100万人もの中国人観光客が香港を訪れており、1日あたりに換算すると約14万人という驚異的な規模の人々が行き交っていました。中国政府はすでに団体旅行の禁止へと踏み切っていますが、今回さらに入境者の約半分を占めていた個人旅行者まで止めることで、業務上の移動を除く約7割の流入を阻止できる計算です。SNS上では「ようやく実効性のある水際対策が始まった」「これ以上の蔓延を防ぐには致し方ない」といった安堵の声が目立っています。
このように政府の強硬な姿勢にはSNSでも多くの支持が集まる一方で、「決断が少し遅すぎたのではないか」という厳しい指摘も飛び交っているのが現状です。未知のウイルスに対する恐怖が広がる中、完璧な防御策を求める市民の緊張感は依然としてピークに達しています。しかし、膨大な経済的損失を覚悟の上でここまでの大規模な封鎖に踏み切った香港政府の決断は、感染拡大の波を食い止めるための極めて重要なターニングポイントになるのではないでしょうか。
一方、大型連休である春節(旧正月)のタイミングで中国本土に滞在している香港市民に対しては、一刻も早い帰還が呼びかけられています。さらに無事に香港へ戻った後も、ウイルスの潜伏期間を考慮して14日間にわたり自宅にとどまることが強く要請されました。潜伏期間とは、体にウイルスが侵入してから実際に熱や咳などの症状が出るまでの期間を指し、この間に他者へ感染させるリスクを排除するための徹底した自己隔離が求められている状況です。
これに合わせる形で、香港政府は連休明けとなる2020年1月29日から2020年2月2日まで、公務員の勤務形態を在宅ワークに切り替えることも決定しました。ウイルスの封じ込めに全力を注ぐため、まずは行政機関から率先して人の密集を避ける動きを見せています。その一方で、経済の心臓部である香港取引所は2020年1月29日から予定通り株式市場の取引を再開することを明らかにしており、市民生活の安全を守りつつも経済の麻痺は最低限に抑えたいという複雑な思惑が垣間見えます。
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