世界中で猛威を振るい始めている新型コロナウイルスによる肺炎の拡大に伴い、日本の東北地方にある企業や経済にも大きな波紋が広がっています。生活用品大手のアイリスオーヤマ(本社・仙台市)は、深刻なマスク不足に対応するため、中国にある自社工場での大増産に踏み切ることを決定しました。
アイリスオーヤマは当初、中国の旧正月である「春節」に合わせて大連工場と蘇州工場の操業を10日間停止する予定でした。しかし、日本国内でのマスク需要が急激に高まっている事態を重く見て、休暇をわずか3日間に短縮してフル稼働で生産を進める方針です。
この迅速な決断に対し、SNS上では「本当にありがたい」「工場の従業員の方々には感謝しかない」といった称賛の声が溢れています。その一方で、「そこまでしてもマスクが足りないのか」と、事態の深刻さに不安を募らせる書き込みも目立ち、市民の危機感の強さが浮き彫りになっています。
百貨店や空の便にも影!観光業への懸念
新型肺炎による打撃は、人々の移動や消費の現場にも直撃しています。例年であれば春節の休暇を利用した多くの中国人観光客で賑わう仙台市の老舗百貨店「藤崎」では、本館1階の免税カウンターを訪れるアジア圏からの買い物客が、2019年の同時期に比べて明らかに減少しています。
幸いにも同店における訪日外国人客による売り上げの割合は全体の1%未満であるため、現時点での経営への直接的な影響は軽微とされています。しかし、中国政府が2020年1月27日から海外への団体旅行を禁止したことで、今後の客足のさらなる冷え込みが強く懸念されます。
さらに空の便にも乱れが生じています。2020年1月28日に運航予定だった中国国際航空の大連経由北京―仙台線が、出発地の大雪を理由に欠航となりました。週4便の定期ルートですが、団体旅行の禁止措置と相まって、今後の東北へのインバウンド(訪日外国人観光)路線に暗い影を落としています。
経済界から上がる悲痛な声と今後の展望
今回の危機に対して、東北経済連合会の海輪誠会長は2020年1月28日、経済活動の全般に悪影響が及ぶことを大変深く憂慮しているとの声明を発表しました。感染源とされる中国湖北省武漢市では交通機関が遮断されるなど、強力な封鎖措置が取られています。
海輪会長は、こうした厳しい制限により東北地方への観光客や宿泊客が激減し、ひいては国内全体の消費低迷につながるという見方を示しています。この指摘通り、観光や小売業における損失は地域経済にとって計り知れない打撃となるでしょう。
筆者の視点として、今回のアイリスオーヤマの迅速な増産対応は、企業の社会的責任を果たす素晴らしい決断であると高く評価します。一方で、1つの地域や国に依存したサプライチェーン(部品の調達から製造、配送までの一連の供給網)の脆さも浮き彫りになりました。
今後は感染拡大の防止に全力を尽くすと同時に、過度なインバウンド依存から脱却し、予測不能なリスクに強い経済体制を地域全体で再構築していくことが強く求められているのではないでしょうか。
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