世界中で猛威を振るい始めている新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、中国政府が団体旅行の禁止措置を決定しました。このニュースは日本国内のビジネス界にも激震を走らせており、特にインバウンド、つまり訪日外国人観光客による消費をビジネスの柱としてきた飲食店や小売りへの影響が急速に深刻化しています。
大手居酒屋チェーンのワタミでは、現時点で早くも約2000人分の予約キャンセルが発生するという異常事態に直面していることが判明しました。SNS上でも「これからの歓送迎会シーズンも不安」「街から一気に活気が消えそうで怖い」といった、実体経済への悪影響を心配する悲痛な声が数多く寄せられています。
今回の騒動で大きな打撃を被っているワタミでは、主に団体客によるお昼の時間帯の利用が人気を集めていました。特に外国人観光客に大人気のエリアである東京・浅草の店舗などでは、毎月数千人規模の中国人客が足を運んでいたといいます。しかし、新型肺炎の感染拡大に伴う渡航制限により、旅行客のビザが発給されない事態が相次ぎ、キャンセルが続出する結果となりました。
日本の外食大手各社は、これまで旅行会社と綿密な提携を結ぶことで、巨大なマーケットである中国からの団体客を積極的に誘致してきました。国がまとめたデータによると、2019年の中国からの訪日客による年間の総消費額は1兆7718億円に達し、国や地域別で見ても圧倒的なトップです。そのうち、飲食費だけで2955億円を占めており、いかに彼らの胃袋が日本の外食産業を支えていたかが分かります。
旅行会社向けの飲食店検索サイト「団タメ!」の運営企業によると、同社が仲介した中国人向けツアーの食事予約は、2020年1月24日を最後に、2020年2月20日頃までの分が全てキャンセルになるという壊滅的な状況です。2020年1月28日の時点でキャンセル数は222件、人数は約1万人に達しており、金額にして約1800万円の損失に上ることが明らかになりました。
さらに深刻なことに、すでに2020年4月分のツアーでもキャンセルが出始めており、影響の長期化は避けられない見通しです。筆者の視点としても、目先の春節(旧正月)の売上を失うだけでなく、春の観光シーズンまでこの冷え込みが続けば、多くの中小飲食店が存続の危機に立たされるのではないかと強い危機感を抱いています。
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百貨店や家電量販店にも飛び火する深刻な買い控え
この未曾有の危機による打撃は、決して外食産業だけに留まりません。大手百貨店の三越伊勢丹では、2020年1月24日から2020年1月28日までの5日間において、首都圏の主要3店舗における免税売上高が、前年の春節商戦の同時期と比べて数パーセント減少していることが分かりました。
本来であれば、春節の期間は日本の家電量販店にとっても最大の稼ぎ時であるはずです。しかし、都内の店舗からは「マスクばかりが飛ぶように売れる一方で、利益率の高い主要な家電製品の動きは極めて鈍い」という、現場の困惑と落胆の入り混じった声が漏れ聞こえてきます。
こうした現状を鑑みると、私たちはインバウンドという特定の外部需要に過度にしがみついてきた、これまでの観光立国戦略の脆さを突きつけられていると言えるでしょう。今後は不測の事態に備え、国内の消費、すなわち内需をしっかりと喚起して経済の土台を固めるような、ビジネスモデルの根本的な見直しと多様化が急務であると考えます。
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