新型肺炎で激変する為替市場!なぜ「有事の円買い」は消え、ユーロ暴落とドル独歩高が起きたのか?

世界中を震撼させている新型肺炎の感染拡大により、金融市場には激震が走っています。投資家たちがリスクを避けようと必死になる中、これまで定番だった「危機の時は日本の通貨を買っておく」という鉄則が、今回はまったく見られません。ネット上でも「株価がこんなに下がっているのに、どうして円高にならないの?」と首をかしげる声が相次いでおり、これまでの常識が覆る事態に困惑が広がっているようです。

市場の緊張が一気に高まったのは、感染者が2000人を超えた2020年1月26日の休日明けでした。翌日の2020年1月27日、東京株式市場では日経平均株価が一時500円以上も値下がりし、アメリカのニューヨーク市場でもダウ平均株価が450ドルを超える大暴落を記録しています。本来であれば、こうした株安の局面では安全資産とされる円に注文が集中し、急激な円高が進むはずでした。

しかし、実際の為替相場は驚くほど静かな動きにとどまっています。2020年1月27日の早朝に1ドル=108円台後半をつけたものの、その後は109円近辺で値動きがストップしてしまいました。この奇妙な現象の裏には、今回の危機が「中国」を発端にしているという、極めて特殊な背景が隠されているのです。

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主役に躍り出たユーロ売りと中国経済の深い影

日本国内では観光客の減少を心配する声が目立ちますが、国際金融市場のプロたちが注目しているのはヨーロッパ経済への大打撃です。実は、ドイツをはじめとする欧州諸国は、自動車などの輸出を中国に深く依存しています。そのため、中国の景気が冷え込むと真っ先にヨーロッパが巻き添えを食らう構造になっており、これが原因で欧州の共通通貨であるユーロが猛烈に売られる展開となりました。

さらに運が悪いことに、ユーロはイギリスのEU離脱問題が最悪の事態を避けたことで、2019年末にかけて大きく値上がりしていました。利益を確定させたいヘッジファンドなどの短期投資家にとって、今回の新型肺炎は絶好の「売り時」になってしまったと言えます。SNSでは「ユーロの下げが止まらない」「今回は円買いではなくユーロ売りが本質だ」といった鋭い指摘が飛び交っています。

このようにユーロが一人負けした結果、売られたユーロの受け皿として、円とドルの両方が同時に買われることになりました。お互いに引っ張り合う形になったため、結果として円とドルのバランスは崩れず、対ドルでの円高が進まなかったというわけです。2020年1月初めに起きたアメリカとイランの軍事衝突の時は、アメリカ自身が当事者だったためドルが売られて円高になりましたが、今回は全く異なるゲームが展開されています。

世界経済の機能不全と今後のシナリオ

今回の株価急落は短期的なパニック心理によるものという側面もありますが、実体経済へのダメージは想像以上に深刻でしょう。2020年1月28日の時点で、中国国内の感染者数は5974人に達し、かつて世界を恐怖に陥れたSARS(重症急性呼吸器症候群)の規模をすでに上回っています。世界第2位の経済大国がストップすることの影響は計り知れません。

現に、ユニクロが中国国内の店舗の1割以上を閉鎖したほか、スターバックスも過半数の店舗を休業させる事態に追い込まれています。影響は消費だけでなく、自動車工場などの生産ラインの停止にも及んでおり、サプライチェーンの寸断が現実味を帯びてきました。私は、今回の事態が世界経済の成長を大きく停滞させる引き金になると確信しています。

中国の実質経済成長率は、2019年の時点で過去29年ぶりの低水準にまで落ち込んでいました。そこへ今回の新型肺炎が直撃した形です。事態が長期化すれば、春先に向けて世界的な大不況への恐怖が本物になり、再び安全な逃避先として「有事の円買い」が爆発的に復活する可能性は極めて高いと考えられます。投資家は今の静けさに惑わされることなく、次の波乱に備えるべきです。

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