世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、日本の株式市場に新たな地殻変動が起きています。それは、オフィスに出社せず自宅などで業務を行う「テレワーク(在宅・遠隔勤務)」の普及に、いよいよ強力な追い風が吹き始めたという見方です。
日本国内において最初の感染者が公式に確認された2020年01月16日以降の株価の動きを見ると、その差は一目瞭然でしょう。全体的な市場の指標である日経平均株価が2%下落する不調のなかで、テレワーク関連企業の株価は驚異的な逆行高を記録しています。
具体的な銘柄を挙げると、業務効率化システムを提供するサイボウズや、Web会議システム大手のブイキューブの株価がそれぞれ9%も跳ね上がりました。さらに、仮想デスクトップ技術に強みを持つアセンテックも8%の上昇を見せており、市場の期待の高さがうかがえます。
欧米に遅れをとる日本の現状とGMOが見せた決断
総務省のデータによると、日本国内における企業のテレワーク導入率は上昇傾向にあるものの、2019年時点の数字ではわずか19.1%に留まっているのが現状です。これはアメリカの約8割、イギリスの約4割という導入実績に比べると、明らかに大きな遅れをとっています。
これまでも政府は、東京オリンピック開催に伴う交通機関の混雑緩和を目指し、熱心に旗を振って呼びかけていました。しかしながら、実際に重い腰を上げたのは情報技術(IT)に理解がある一部の大企業や、先進的なビジネスを展開する企業ばかりだったのです。
こうした膠着状態を打ち破るかのように、インターネット大手のGMOインターネットグループが、国内の全従業員約4000人を対象に一斉に在宅勤務体制へ移行すると2020年01月26日までに発表しました。この大胆な感染予防策は世間に大きな衝撃を与えています。
ネット上のSNSでも「このスピード感で決断できるのは本当に素晴らしい」「自分の会社も見習ってほしい」といった、羨望や賛同の声が爆発的に広がりました。未曾有の危機に対するこの決断が、日本全体の働き方を大きく変える契機になると期待を寄せる声は少なくありません。
市場の期待と編集部が占う「働き方改革」の未来
感染症の脅威が日ごとに深刻化するにつれて、日本の証券会社など市場関係者の間からも「今回の一連の騒動こそが、テレワークの導入が爆発的に拡大する歴史的な転換期になるかもしれない」という予測が急速に強まってきました。
実を言うと、テレワークというテーマは過去の株式市場でも投資家の注目を集めたことがありますが、これまでは一過性のブームで終わり、持続力に欠けるのが難点でした。しかし、今回の局面は従来のような一時的な流行とは明らかに一線を画しているように見えます。
私個人の意見として、今回の新型肺炎という未曾有のショックは、単なる企業のBCP(事業継続計画)対策を超えて、日本の悪しき前例主義を打破する劇薬になると確信しています。BCPとは、災害などの緊急事態でも企業が業務を止めないための計画のことです。
国全体で生産性の向上や働き方改革が声高に叫ばれる今、満員電車での通勤リスクを避ける動きは必然の選択でしょう。この危機を契機として、名ばかりだったテレワークが日本社会へ本格的に根付くかどうか、私たちはまさに歴史的な分岐点に立ち会っているのです。
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