日本の働き方が、いよいよ歴史的な転換期を迎えることになるかもしれません。2020年1月28日、経団連と連合のトップが東京都内で会談を行い、今年も春季労使交渉、いわゆる「春闘(しゅんとう)」がスタートしました。春闘とは、労働組合が経営陣に対して賃上げや労働環境の改善を求める毎年の交渉のことです。今回の注目点は、長年続いてきた「年功序列」や「一律のベースアップ」から脱却できるかという点にあります。
経団連の中西宏明会長は、意欲ある人材が力を発揮できる環境づくりのため、従来の日本型雇用制度を見直すべきだと強く訴えました。特にキーワードとなっているのが「ジョブ型雇用」の拡充です。これは、勤務時間や年齢ではなく、担当する「職務(ジョブ)」や個人の成果に応じて給与を決める仕組みを指します。横並びの昇進や昇給が、若手や海外の優秀な人材を獲得する妨げになっているという危機感が経営側にはあるのでしょう。
この大胆な提案に対し、SNS上では早くも大きな反響が巻き起こっています。「能力がある若手が正当に評価されるのは素晴らしい」「頑張った分だけ報われる時代になってほしい」といった前向きな声が目立ちました。その一方で、「成果主義という名の間引きやリストラにつながるのではないか」「成果の評価基準が不透明だと社内がギスギスしそう」という、雇用流動化に対するリアルな不安や警戒感も数多く投稿されています。
労働組合側も、この変化の波に独自の動きを見せています。電機大手の労働組合が集まる電機連合では、各組合が個別に判断することを容認する構えです。また、トヨタ自動車グループの労組は、一律の定期昇給にこだわらず、評価によって個人のベア(ベースアップ)額に差をつける新制度を提案する方向へと舵を切りました。有能な働き手を引き留めるため、テレワークの拡充など多様な働き方を支援する動きも焦点となりそうです。
しかし、連合の神津里季生会長は、雇用制度の議論ばかりが先行して本来の賃上げ交渉がかすんでしまうことに釘を刺しました。日本経済がこの20年間、賃金の停滞という大きな課題を置き去りにしてきたからに他なりません。もし転職やキャリアチェンジに失敗した場合、労働者を守るための社会的な「安全網(セーフティネット)」が十分に整備されていない現状では、労働者が一方的にリスクを背負うことになってしまうでしょう。
私は、この「脱一律」の議論こそが日本の国際競争力を取り戻す契機になると考えます。ただし、単なる人件費抑制の手段としてジョブ型雇用が悪用されてはなりません。経営側は明確で納得感のある評価軸を提示し、労働者側も自らのスキルを磨き続ける覚悟が求められます。お互いが対等なパートナーとして、真に豊かになれる新しい働き方のビジョンを、この2020年の春闘から真摯に紡ぎ出してくれることを期待してやみません。
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