日本の働き方が、2020年4月の大きな転換点を前に激しく揺れ動いています。正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇差を解消することを目指す「同一労働同一賃金」に関連する2つの法律がいよいよ施行されるからです。この改革の波は、これまで「正社員の特権」とも言えた諸手当のあり方を根本から変えようとしています。
現在、多くの企業が格差是正という名のもとに、正社員向けの家族手当や住居手当の縮小・廃止に乗り出しています。インターネット上では「なぜ頑張って正社員になったのに給料が減るのか」「生活の保障が壊される」といった悲鳴に近い声が次々と上がっており、労働者の間では先行きの見えない不安が急速に広がっているのが現状です。
日本郵政グループが踏み切った「手当見直し」の衝撃
この動きを象徴するのが日本郵政グループの事例です。同社では2018年から2年をかけて、5種類の手当と3種類の休暇制度を大幅に改定しました。具体的には、正社員に支給されていた月額最大2万7000円の住居手当を10年かけて段階的に廃止し、寒冷地手当も5年で半減させるという踏み込んだ内容になっています。
一方で、無期転換した非正規社員らには新たに年始手当を支給するなど、文字通り「格差を埋める」作業が進んでいます。労働組合側は「不合理性をなくすための苦渋の決断」としていますが、現場の正社員からは唐突な変更に対する不満が噴出しました。家族の生計を支える手当が削られる痛みは、単なる数字以上の重みがあるからです。
ここで解説が必要なのが「同一労働同一賃金」という考え方です。これは、職務内容や責任の範囲、転勤の有無などが同じであれば、雇用形態に関わらず同じ賃金を支払うべきという原則を指します。もし差がある場合でも、それが「不合理ではない」と説明できなければ、法律違反となるリスクを企業は抱えることになるのです。
進む「生活保障給」からの脱却と個人の防衛策
専門家によれば、今後は「正社員だけに支給される手当」の維持は極めて困難になると見られています。実際に、ある人材派遣会社では近隣居住者への補助を廃止し、その分を基本給に組み込むことで対応しています。企業側も福利厚生の充実にブレーキをかけざるを得ず、予定していた特別休暇の導入を見送るケースも相次いでいるのが実情です。
この変化の本質は、年齢や家族構成に応じて給与が決まる「生活保障型」の賃金体系から、仕事の価値で決まる「職務給」への移行にあります。先行して改革を行った生協の職員からは、「手当が消えたことを家族にすぐには話せなかった」という切実な声も漏れ聞こえてきます。役職を外れれば給与が下がるという現実に、心も家計も備える必要があります。
私は、この法改正を「単なるコストカット」で終わらせてはならないと考えます。非正規の方の待遇改善は急務ですが、それが正社員の意欲を削ぐ形になれば本末転倒です。企業は年収ベースでの維持を模索し、私たち働く側も「正社員なら一生安泰」という幻想を捨て、自らのスキルや生計プランを能動的に見直していくべきでしょう。
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