自動車部品大手のデンソーが、2020年1月31日に発表した2020年3月期の業績予想が注目を集めています。結論から申し上げますと、連結純利益は前期比12%減となる2250億円を見込んでおり、従来予想から320億円もの下方修正を余儀なくされました。これまで増益を見込んでいた状況が一転し、減益という厳しい結果となった事実に、業界内外から驚きの声が上がっています。
今回の業績悪化を招いた最大の要因は、突如発生した420億円にのぼる「品質費用」の計上です。これは完成車メーカーによるリコール、つまり製品の欠陥を無料で修理・回収する対応に伴い、デンソー側が部品交換やソフトウェアの書き換え費用を新たに引き当てたことによるものです。自動車部品の精度が極めて高いデンソーにおいて、これほどの大規模な追加費用が発生したことは、多くの市場関係者にとって予想外の衝撃でした。
二重の逆風、中国市場の減速と先行投資の重圧
さらに追い打ちをかけたのが、アジア市場の販売減速です。特に世界最大の自動車市場である中国では、新車の需要そのものが伸び悩んでいます。デンソーはトヨタ自動車向けこそ堅調に推移しているものの、欧米メーカーや現地メーカー向けの販売で苦戦を強いられました。インドやタイを含めた広範なエリアでの販売落ち込みは、約150億円の利益マイナス要因となっています。
こうした状況下で、経費削減や円安による利益押し上げ効果も期待されましたが、残念ながらこれらだけではカバーしきれませんでした。SNS上でも「これだけの大企業が420億円もの品質費用を急遽計上するのは並大抵のことではない」といった懸念や、「厳しい時代だが、次世代技術への投資まで止めるわけにはいかない」といった業界の構造的な苦悩に共感する声が多く見受けられます。
未来への投資「CASE」がもたらす光と影
注目すべきは、業績への重圧がかかる中でも、デンソーが未来への投資を緩めていない点です。自動運転や電動化といった、自動車業界の変革を示す言葉「CASE(ケース)」に向けた先行投資はむしろ拡大しています。2020年3月期の研究開発費は3%増の5100億円と過去最高水準に達する見通しであり、売上高に対する研究開発費の比率は9.7%という高い水準を維持しています。
CASEとは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった言葉です。まさに100年に一度と言われる変革期において、ここへの投資は企業の生存戦略そのものです。電気自動車(EV)用インバーターなどの基幹部品増産に伴う減価償却費の増加も加わり、短期的には利益を圧迫する要因となっていますが、これは避けて通れない道だと言えるでしょう。
私個人としては、今回の業績下方修正は短期的な痛みであると考えます。松井靖経営役員が会見で来期に向けた利益改善を強調した通り、強みである電動化や先進運転支援システム(ADAS)の需要は着実に拡大しています。今期は試練の時ですが、技術開発のアクセルを緩めない姿勢こそが、2021年3月期以降の反転攻勢に繋がる鍵になるのではないでしょうか。
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