出版不況が叫ばれて久しい昨今、なんと15年連続で市場が縮小し続けているという厳しい現実をご存知でしょうか。そんな逆風の中で、出版界の常識を覆し、驚異的なヒットを飛ばしている企業があります。それは宝島社です。2020年2月3日現在、同社が仕掛けたコンビニエンスストア向けの雑誌販売戦略が、大きな注目を集めています。
この成功の裏側には、「付録の見せ方」を根本から変えた驚きのアイデアがありました。これまでの雑誌付録といえば、中身が見えない不透明な小箱に入れられているのが当たり前でしたよね。しかし、同社は2019年9月から、なんと付録を透明なパッケージに入れて「丸見え」にするという大胆な手法を採用したのです。
「雑誌の顔」を捨てて手に入れた大ヒット
実はこの戦略、当初から順風満帆だったわけではありません。2018年に宝島社の蓮見清一社長が「コンビニで雑誌を売るにはどうすればいいか」と号令をかけたのが全ての始まりでした。当初はコンビニ専用の棚を設置するなど試行錯誤を繰り返しましたが、雑誌の背面に付録を隠す配置では、思うような成果が得られなかったそうです。
雑誌にとって表紙は「顔」であり、掲載されているタレントへの配慮という業界の固定観念もありました。しかし、コンビニで雑誌を手に取るお客様は、目的買いよりも「ついで買い」が圧倒的に多いものです。そこで、「増刊号」として位置づけを明確にすることで、付録を前面に押し出すという英断を下したのです。
消費者の心理を突いた「ついで買い」の誘発
結果はどうだったかというと、その効果は絶大でした。2019年9月からセブンイレブン全店で透明パッケージを導入したところ、例えばファッション雑誌の「オトナミューズ」では販売数が74%増、「リンネル」でも48%増を記録しました。まさに、雑誌の枠を超えて「付録という魅力的なグッズ」を直接訴求したことが、購買意欲を直撃したと言えるでしょう。
SNS上でも「パッケージ越しにクオリティが確認できるから安心して買える」「思わずレジに持っていってしまった」といった喜びの声が多く見受けられます。実際に手に取った時の質感やサイズ感がその場でわかる安心感は、デジタル化が進む現代だからこそ、より強く求められている体験なのかもしれません。
出版不況に対する一石
出版科学研究所のデータによれば、2019年の紙の出版物の推定販売金額は、前年比4.3%減の1兆2360億円に留まりました。雑誌単体で見れば4.9%減と、さらに厳しい数字が並んでいます。そんな中、単なる本の販売にこだわらず、顧客の視点に立って陳列やパッケージを工夫する宝島社の姿勢には、未来のメディアの形が示されている気がしてなりません。
私個人としても、この戦略は非常に合理的だと感じています。現代人は情報過多な環境にあり、立ち止まって中身を吟味する時間は減っています。だからこそ、一目で「欲しい!」と思わせる直感的な訴求力が、どの業種においても重要になっているのではないでしょうか。宝島社の挑戦は、他の出版社にとっても大きなヒントになるはずです。
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