オフィス用品通販大手のアスクルが、経営体制の立て直しに向けて大きな一歩を踏み出しました。2020年2月5日、同社は新たな独立社外取締役の候補者4人を発表したのです。独立社外取締役とは、会社の経営陣や大株主から独立した立場で、一般株主の利益を守りながら経営を監視する専門家のことを指します。かつて激しい対立があっただけに、今回の人事には大きな注目が集まっています。
振り返れば、2019年8月2日の定時株主総会において、筆頭株主であるヤフー(現Zホールディングス)などの反対により、当時の創業社長と社外取締役3人の再任が否決されるという異例の事態が起きました。これにより同社の独立社外取締役は一時的にゼロとなり、ガバナンス体制への懸念が広がっていたのです。SNS上でも「今後の経営はどうなるのか」「親会社との関係性が心配」といった不安の声が多数寄せられていました。
しかしその後、両社は対立を乗り越えて協業を深める方針へと舵を切りました。今回の人選は、社外の有識者で構成される指名・報酬委員会が、Zホールディングスや大株主のプラスから丁寧に意見を聴取した上で進められたものです。候補には、ネット通販で大衆薬販売を手掛けたケンコーコム(現楽天)の創業者である後藤玄利氏や、法律のプロである弁護士の市毛由美子氏ら、実績ある4名が名を連ねています。
この刷新案は、2020年3月13日に開催される臨時株主総会で審議される予定です。かつて10人いた取締役は、前述の退任劇やプラス前社長の逝去などが重なり、一時は5人にまで減少していました。もし今回の議案が承認されれば、取締役は計9人体制へと回復します。さらに、そのうちの4割強を独立社外取締役が占めることになるため、経営の透明性は劇的に向上するでしょう。
投資家へ影響力を持つ議決権行使助言会社などは、取締役会の3分の1以上を社外取締役にすることを求めています。今回の再編は、その基準を大きくクリアする前向きな改革だと私は評価します。企業が持続的に成長するためには、大株主の意向に流されず、客観的な視点で舵取りを行う存在が不可欠です。アスクルがこの新体制を機に、真のガバナンス強化を果たせるかどうかが今後の成長の鍵を握るはずです。
親会社ZHDの好決算が後押しする、EC事業の新たなシナジー
アスクルの改革を後押しするように、親会社であるZホールディングスが2020年2月5日に発表した2019年4〜12月期の連結決算は、非常に好調な数字を記録しました。国際会計基準に基づく純利益は、前年の同じ時期と比べて7%増の750億円に達しています。さらに売上収益は7%増の7596億円、本業の儲けを示す営業利益も3%増の1235億円と、確かな成長軌道を描いていることが分かります。
この好業績の背景には、2019年11月に衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOを子会社化した戦略が、早くも実を結んだ点が挙げられます。同社やアスクルが属する電子商取引(EC)事業全体の営業利益は、3%増の632億円と堅調に推移しました。ネット通販市場の競争が激化する中で、各強みを融合させたグループシナジーが発揮されつつある証拠といえるでしょう。
強力な親会社のバックアップと、アスクル自身のガバナンス体制の健全化が両立すれば、eコマース市場における両社の存在感はさらに高まるに違いありません。今回の臨時株主総会は、単なる人事の承認にとどまらず、アスクルが新たな信頼を勝ち取るための極めて重要な転換点になるでしょう。今後の進展から目が離せません。
コメント