現代のビジネスシーンにおいて「テレワーク」という働き方が急速に注目を集めています。高速インターネットが日常に溶け込み、場所を選ばずに仕事ができる環境が整ったことで、多くの企業がこの新しいスタイルを導入し始めました。しかし、いざ導入するとなると「部下の管理が難しそう」といった不安を抱く経営者も少なくありません。今回は、日本テレワーク協会の客員研究員である今泉千明氏に、スムーズに導入を進めるためのコツを伺いました。
そもそもテレワークには、自宅で業務を行う「在宅勤務」、移動中や外出先で作業する「モバイルワーク」、そして本拠地以外の施設を利用する「サテライトオフィス」の3つの形態があります。在宅勤務は育児や介護といった家庭の事情と仕事を両立させるのに非常に有効ですが、今泉氏によれば、現在の中小企業ではフットワークの軽いモバイルワークが最も広く普及しているそうです。
なぜ今、テレワークが必要なのか?
2019年における総務省の調査によれば、日本企業のテレワーク導入率は19.1%に留まっており、大企業に比べて中小企業の対応が遅れているのが現状です。しかし、裏を返せばそれだけ伸び代があるということでもあります。テレワークの最大の利点は、通勤時間を削減し、その分を業務や自己啓発、家庭の時間に充てることで、従業員の「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」が飛躍的に向上する点にあります。
SNSなどでは「家だとサボってしまうのでは?」という懸念の声も聞かれますが、実際にはその逆であると今泉氏は指摘します。テレワークを行う人々は「周囲から手を抜いていると思われたくない」という心理的なプレッシャーを感じやすく、むしろオフィスにいる時よりも集中して業務に励む傾向があるのです。人事評価の基準を、労働時間ではなく成果で判断する「成果主義」にシフトすれば、その効果はさらに高まるでしょう。
中小企業が陥りやすい罠と成功への最短ルート
導入を成功させる鍵は、中間管理職の理解と経営トップのリーダーシップにあります。せっかく制度を整えても、現場のリーダーが「顔が見えないと不安だ」と反対してしまえば、導入は進みません。特に組織の規模が小さい中小企業であれば、社長自らが先頭に立ってテレワークを推進することで、短期間で文化を浸透させることが可能です。特定の部署や限られた層だけでなく、管理職自らが積極的に活用する姿を見せることが、社内の心理的なハードルを下げる最善策となります。
「導入コストが心配」という声もありますが、2019年12月2日現在、世の中には優れた無料のビジネスチャットや管理ツールが数多く存在します。最初から高価なシステムを導入するのではなく、まずは手近なソフトでスモールスタートを切り、試行錯誤しながら自社に最適な形を探っていくのが賢明な判断と言えます。
もちろん、すべての業務をオンライン化する必要はありません。今泉氏が提案するように、週に1〜2日の導入から始めることで、対面コミュニケーションの良さとテレワークの効率性を両立させることができます。私自身の考えとしても、これからの時代を生き抜く企業にとって、テレワークは単なる「福利厚生」ではなく、優秀な人材を惹きつけ、不測の事態でも事業を継続させるための「経営戦略」そのものであると感じます。
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