「森のバター」と称され、そのクリーミーで濃厚な味わいから絶大な人気を誇るアボカド。現在、日本の食卓に並ぶもののほとんどがメキシコ産などの輸入品ですが、今、日本の地方で「国産アボカド」を育てる動きが熱を帯びています。特に長崎県や愛媛県といった、かつてミカン栽培が盛んだった地域が、その新たな舞台として注目を集めているのです。
アボカドは栄養価の高さが注目され、2018年の輸入量は約7万4000トンに達しました。この10年で市場規模は2.5倍にも拡大しており、SNSでも「国産は次元が違う」「一度は食べてみたい」と期待の声が溢れています。これまで輸入が当たり前だった果実に、日本の農家が真っ向から挑戦を始めています。
休耕地を再生させる「手間いらず」の秘密
なぜ今、ミカン農家がアボカドに注目しているのでしょうか。最大の理由は、他の果樹に比べて「栽培の手間が少ない」という点にあります。アボカドは露地栽培(屋外の畑で育てること)が可能で、成長すれば少ない肥料で実を付けます。この特性が、高齢化で管理が難しくなった「耕作放棄地」や「休耕地」の解消に一役買っているのです。
2019年11月25日現在、長崎県諫早市では「長崎県諫早アボカド会」が中心となり、ミカン畑の跡地を活用した栽培が進んでいます。リーダーの平野秀敏氏は、2012年からこの挑戦を開始しました。寒波や塩害といった自然の猛威を乗り越え、ついに成木が実を結ぶ段階にまで漕ぎ着けたのです。
彼らが手掛けるのは、輸入品で主流の「ハス」種ではなく、皮が緑色のまま熟す「ベーコン」や「フェルテ」といった品種です。これらは寒さに比較的強く、国産ならではの鮮度と濃厚なコクが持ち味。先日の試験販売では、1玉1000円を超える高価格ながら、大玉50個がわずか2時間で完売するという驚異の人気を見せました。
自治体の強力バックアップで広がるブランド化
一方、愛媛県松山市では行政が主導してアボカド栽培を後押ししています。苗木の手ごろな価格での分譲を行い、2018年度には1.5トンの販売を記録しました。市側は、2022年度までに栽培面積を10ヘクタールまで広げる計画を掲げており、将来的にミカンに並ぶ看板ブランドに育て上げようという並々ならぬ意欲が感じられます。
アボカドは気候変動の影響もあり、栽培適地が北上していると言われています。こうした環境変化を逆手に取り、新しい産業として定着させる試みは非常に合理的でしょう。長崎アボカド普及協議会の山中孝友副会長が指摘するように、これが農家の収益改善に直結すれば、地方農業の未来は明るいものになるはずです。
編集部としては、この「国産アボカド」のムーブメントに大いに期待しています。輸入物は輸送時間の関係で未熟なうちに収穫されますが、国産なら樹上でギリギリまで熟成させることが可能です。あの「本当の食べ頃」の贅沢な味わいが身近になる日は、そう遠くないかもしれません。2024年に向けて生産体制が整うのが今から楽しみですね。
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