プロフェッショナルの世界において、真の信頼関係とは一体どのような形を指すのでしょうか。2019年12月09日、その年のプロ野球界で最も輝いた捕手と投手を讃える「最優秀バッテリー賞」の表彰式が華やかに開催されました。そこで語られたエピソードは、単なる思い出話の枠を超え、現代の組織論にも通じる深い示唆に富んでいました。
かつて広島東洋カープの黄金時代を支えた伝説のバッテリー、大野豊さんと達川光男さんが登壇し、結成当時の意外な舞台裏を明かしたのです。驚くべきことに、当初の二人は決して意気投合していたわけではありませんでした。饒舌な達川さんに対し、大野さんは当初「性格的に合わないかもしれない」とさえ感じていたというから驚きです。
しかし、彼らを結びつけたのは「チームを勝利に導きたい」という熱い志でした。大野さんは、互いの考えを善悪で判断せず、徹底的に対話を重ねることで、自分たちの間に確固たる橋を架けたと振り返ります。SNSでは「これぞプロの仕事」「仲良しクラブではない強さを感じる」と、馴れ合いを排した二人のストイックな姿勢に称賛の声が相次いでいます。
情よりも実力を選ぶ「ビジネス・パートナー」としての割り切り
私たちは仕事において、つい「性格の良さ」や「居心地の良さ」を優先してしまいがちではないでしょうか。しかし、勝負の世界は残酷です。どれほど人柄が素晴らしくても、実力が伴わなければ結果を残せず、評価も上がりません。大野さんと達川さんの関係は、相性の良し悪しを超越した「仕事のパートナー」としての究極の形と言えるでしょう。
こうしたプロ同士の化学反応を語る上で欠かせないのが、野村克也さんと江夏豊さんのコンビです。江夏さんは著書の中で、野村さんの第一印象を「意地の悪い人」と表現しています。野村さんは、移籍してきた江夏さんに対してパ・リーグ打者の情報をあえて教えず、自ら考え工夫することを強いたのです。一見すると不親切な対応に思えます。
「ささやき戦術」に代表されるように、相手を出し抜く知略に長けた野村さんのやり方は、当時の投手にとって耳の痛い指摘も多かったはずです。しかし、江夏さんは次第に野村さんに心酔していきます。それは、当時軽視されていた「救援(リリーフ)投手」としての新たな価値を、野村さんが見出し、第二の人生を切り拓いてくれたからに他なりません。
心地よさを捨てて「嫌われる勇気」を持つリーダーの強さ
「先発こそが投手の花道」と信じられていた時代に、エース級の投手を抑えに回す決断は、強い反発を招くリスクがありました。それでも野村さんが進言できたのは、嫌われることを恐れず、チームの勝利に何が必要かを冷徹に見極めていたからです。このエピソードは、現代のリーダーにとっても「嫌われる勇気」の重要性を説いています。
編集者としての私の視点から申し上げれば、現代社会は「優しさ」を重んじるあまり、組織がぬるま湯に浸かってしまう危険性を孕んでいると感じます。耳の痛いことを言ってくれる存在は、短期的には疎ましく感じるものです。しかし、長い目で見れば、そのような指摘こそが自分を成長させ、組織を強くする原動力になるのではないでしょうか。
心地よい言葉ばかりが飛び交う集団は、一見幸せそうに見えますが、外からの逆風に脆い一面も持ち合わせています。2019年12月12日に配信されたこの記事が示す通り、馴れ合いを捨ててお互いの「個」をぶつけ合うことこそ、黄金時代を築くための唯一の道なのです。私たちも、仕事の相棒選びにおいて「肌が合うか」以上の視点を持ちたいものです。
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