米国のビジネスシーンに激震が走っています。シリコンバレーを象徴する巨大IT企業の「社内満足度」に、かつてない異変が起きているのです。2019年12月11日までに発表された最新の調査結果によると、これまで「憧れの職場」として君臨してきたスター企業たちが、その輝きを失いつつある実態が浮き彫りとなりました。
今回の調査を実施したのは、求人情報や現役社員による赤裸々な口コミで知られる米グラスドア社です。同社は2008年から、実際に働くスタッフの声を独自の視点で分析し、毎年「働きやすい企業ランキング」を発表してきました。ちなみに同社は、2018年に日本のリクルートホールディングスによって買収されたことでも注目を集めた、人材業界のリーディングカンパニーですね。
最新の2020年版ランキングにおいて、最も世間を驚かせたのはグーグルとフェイスブックの順位激減でしょう。グーグルは前年の8位から11位へと後退し、さらに深刻なのはフェイスブックです。前年の7位から23位へと、まさに急降下と言えるレベルで順位を落としてしまいました。両社が揃ってトップ10から姿を消すのは、過去5年間で初めての事態となります。
自由な社風の終焉と「管理社会」への変貌
かつてのグーグルといえば、2015年版で首位に輝くなど「自由な働き方」の代名詞でした。一方のフェイスブックも、2018年版を含め過去3回もトップを飾っています。無料の豪華な食事や柔軟なリモートワーク、そして何より経営陣とのオープンな対話が保証された透明性の高い文化が、世界中から優秀なエンジニアを惹きつける最大の武器だったはずです。
しかし、現在の状況は一変しています。ネット界の巨人たちは今、プライバシー侵害問題やフェイクニュースの拡散、さらには独占禁止法(反トラスト法)への抵触といった厳しい社会的責任を問われています。反トラスト法とは、巨大企業が市場を独占して公正な競争を妨げないよう制限する法律のことですが、こうした外部からの監視が強まったことで、社内の自由な空気も急速に冷え込んでいるようです。
SNS上では「かつてのベンチャー精神が消え、普通の官僚的な大企業になってしまった」という嘆きの声や、「情報漏洩を恐れるあまり、社内での情報共有すら制限されている」といった現役社員と思われる切実な反響が散見されます。かつては社員の結束を強めていたオープンな社風が、皮肉にもコンプライアンスという盾によって切り崩されている様子が伺えます。
例えばグーグルでは、経営陣と社員が直接対話する象徴的なイベントだった全社集会の縮小を決定しました。情報管理を徹底するための苦肉の策でしょうが、これは社員にとって「信頼の欠如」と受け取られかねません。私個人の見解としても、過度な管理体制はイノベーションの源泉である『心理的安全制』を損なうリスクがあり、今後の採用競争力に暗い影を落とすのではないかと危惧しています。
新勢力の台頭!ソフト開発やコンサルが上位を独占
ネット大手が苦戦する一方で、新たな主役たちも登場しています。2020年版で堂々の首位に輝いたのは、企業向けマーケティングソフトを展開するハブスポットでした。それに続くのが、戦略コンサルティングの名門ベイン・アンド・カンパニー、そして電子署名サービスのドキュサインといった面々です。
これらの企業に共通しているのは、急成長を続けながらも、社員一人ひとりの成長実感やワークライフバランスを高度に両立させている点でしょう。巨大すぎて身動きが取れなくなり、管理に追われるGAFA(ガーファ)に対し、よりパーソナルで風通しの良い環境を維持している企業が支持を集める結果となりました。
企業の価値は、時価総額や売上だけで測れるものではありません。そこで働く人々がどれだけ誇りを持てるかという本質的な問いに、今、シリコンバレーの巨像たちが直面しています。2019年12月12日というこのタイミングは、テック業界における「働き方」の大きな転換点として、後に記憶されることになるのかもしれません。
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