人事・組織領域において、今や不可欠な存在となりつつあるタレントマネジメントシステム(TMS)。しかし、パーソル総合研究所が2020年1月29日に発表した調査結果は、多くの人事担当者に衝撃を与えました。なんと導入企業の約3割が、早くもシステムの入れ替えを検討しているというのです。TMSが普及してまだ数年という短期間で、これほどの割合が現状に不満を抱いている背景には、どのような課題が隠されているのでしょうか。
このニュースがSNSで拡散されると、人事界隈からは「機能の多さだけで選んでしまい、現場で全く使えなかった」「システムさえ入れればなんとかなると過信していた」といった共感の声が相次ぎました。やはり、どれだけ高機能なツールであっても、自社の運用にフィットしていなければ宝の持ち腐れとなってしまうようです。私たちはツールを「導入」すること自体をゴールにせず、その先にある「何を成し遂げたいのか」という目的を再定義する必要があるでしょう。
機能の「多さ」より「適合性」を重視すべき理由
かつての人事システムといえば、給与計算や勤怠管理など、業務と機能が一対一で結びつくものが主流でした。そのため、機能一覧を比較して選定することに合理性があったのです。しかし、個々の従業員のスキルやキャリアを最大化するタレントマネジメントにおいては、話が変わります。TMSは複数の機能を複雑に組み合わせて運用する設計が必要であり、単に機能が多ければよいというものではありません。
システム選定において機能の多さに惑わされ、「何となく便利そう」という直感で選ぶのは最も避けるべき罠です。実際にSNS上の議論でも「自社の評価プロセスが特殊すぎて、汎用的な機能ではカバーしきれなかった」という悲痛な叫びが見られました。システムの機能が自社のマネジメントスタイルに本当に適合しているか、という視点をどこまでもシビアに追求することが、失敗しないための唯一の道だと言えるでしょう。
「魔法の杖」ではない。最新技術を活かすための準備
近年では、AI(人工知能)を活用して「退職予測」を行うような画期的な機能も登場しています。こうした先進技術は非常に魅力的ですが、ここで冷静になりたいのが、AIを「魔法の杖」のように捉えるリスクです。AIは、あくまで蓄積されたデータを基に分析を行うものです。つまり、予測に必要なデータが正しく蓄積されていなければ、精度の高い分析など望むべくもありません。
仮にAIが精度の高い予測を弾き出したとしても、その結果を基に人事制度としてどうケアするのか、具体的な業務設計が整っていなければ、ただの数字が表示されるだけに終わってしまいます。テクノロジーを導入する前に、データ環境の整備や運用プロセスの構築という泥臭い準備こそが、DX成功の鍵を握っているのだと私は考えます。ツールは目的達成のための手段に過ぎないことを、私たちは決して忘れてはならないはずです。
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