深刻化する人手不足を背景に、世界中で産業用ロボットへの期待がかつてないほど高まっています。そんな中、東京都練馬区に本社を置くコシブ精密が、長野県松川町にある生産拠点の増強に乗り出しました。2019年07月03日、同社はロボットの精密な動きを司る重要部品を増産するため、新工場棟の建設を開始したことを明らかにしています。
SNS上では「日本の地方工場が世界シェアの過半数を握っているなんて胸が熱くなる」「ロボット時代の到来を支えるのは、こうした職人技に近い超精密加工なんだ」といった驚きと期待の声が広がっています。中国をはじめとする海外の人件費高騰が続く中、オートメーション化の波は止まることを知りません。同社はこの好機を確実に捉えようとしています。
マイクロメートルの精度が支えるロボットの関節
コシブ精密が誇る主力製品は、産業用ロボットの関節部分に組み込まれる「スリット板」と呼ばれる部品です。これは円形のガラス素材に、1ミリの1000分の1を単位とする「マイクロメートル」という極めて微細な目盛りを刻んだものです。この目盛りに光を当てることで、ロボットは自分の腕が今どの角度にあるかを正確に検知し、滑らかな動きを実現できるのです。
この「光学式エンコーダ」用のスリット板において、同社は国内シェアの約6割という圧倒的な地位を築き上げています。1964年に「荻原光学目盛研究所」として産声を上げた同社は、もともと顕微鏡用のガラス加工で培った高い技術を持っていました。その伝統的な「目盛り」を刻む技術が、現代の最先端ロボット技術と見事に融合したといえるでしょう。
近年の業績は目覚ましく、2018年07月期の売上高は約25億円に達し、わずか2年前と比較して5割増という驚異的な成長を遂げました。荻原太一社長も「これまでにないほどの強い伸びを感じている」と手応えを語ります。2018年秋以降は一時的な在庫調整による受注の停滞もありましたが、2019年05月からは再び回復の兆しが見えてきているようです。
16億円を投じる新工場棟で生産能力は1.5倍に
将来の需要拡大を見据え、同社は約16億円を投じて延べ床面積5000平方メートルの新工場棟を建設します。これによりスリット板の生産能力は月産120万枚と、現在の1.5倍にまで引き上げられる計画です。2020年中の稼働を目指すこの新施設は、単なる増産拠点ではなく、生産工程を1箇所に集約することで業務の効率化を劇的に高める役割も担います。
現在は公道を挟んで第一工場と第二工場に分断されている生産・開発の機能を整理し、新工場と第一工場へ生産ラインをまとめます。空いたスペースは開発拠点として活用される予定です。こうした一貫生産体制の強化は、品質の安定とコスト競争力の両立に不可欠な戦略であり、技術大国としての日本の底力を改めて世界に示す格好の材料となるはずです。
調査会社のデータによれば、2025年には製造業向けロボットの世界市場は2018年比で2.5倍に膨れ上がると予測されています。市場には波がありますが、人件費の上昇や労働力不足という構造的な課題がある限り、ロボット需要が右肩下がりになることは考えにくいでしょう。他業界からの参入が相次ぐ激戦区において、同社の専門性は大きな武器です。
編集者としての視点では、単に「工場が大きくなる」ということ以上に、長野県松川町という土地に根を張り、世界シェアを支え続ける同社の姿勢に深い感銘を覚えます。グローバルな競争の最前線は、意外にもこうした緑豊かな地域にあるのかもしれません。最先端のロボットが動くたび、その「関節」には日本の誇る技術が刻まれているのです。
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