先日、筆者はアメリカのサンフランシスコを訪れ、日本ではまだ上陸していない人気コスメチェーン店「SEPHORA(セフォラ)」に足を運びました。ここは、世界的なラグジュアリーブランドグループであるLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下にあり、海外のさまざまなブランドの化粧品が並ぶ、まさにコスメ好きにとっては夢のような空間だといえるでしょう。
筆者は20代半ばまで、流行や他者からの評価のために美容にお金を使うよりも、自分のオタク趣味に熱中したいという考えから、コスメへの出費をむしろ避けていました。しかし、ある時知り合ったオタク仲間が、アニメグッズや同人誌を愛でるのと同じ熱量で新しいコスメを集めているのを目にして、「コスメも**『萌え』の対象として楽しめるものなんだ」と気づき、そこからコスメと美容の“沼”に深くはまり込んでいったのです。ちょうどその頃は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で新作コスメのレビューや実際のメイク写真を投稿する「コスメアカウント」が増え始めたタイミングでもありました。
それまでは雑誌や店頭を積極的にチェックすることはなかったのですが、熱心なコスメアカウントをフォローすることで、美容に関する情報が自然と入ってくるようになり、苦手意識が消え去りました。今では新作のデパートコスメ、いわゆるデパコス**に毎月数万円を費やすほどのコスメ好きへと変貌を遂げています。コスメ市場には莫大な広告費用が投じられていますが、その裏側で、消費者が「美」とどのように向き合っているかという思いは、数字だけではなかなか見えにくいものです。
💄美の多様化が止まらない!肌色とジェンダーを超越するコスメトレンド
筆者は、15名の女性たちが持つそれぞれの美意識を綴った書籍『だから私はメイクする』(柏書房)の編集経験や、日々のトレンドを追う中で、世界的に「美の多様化」が加速していることを痛感しています。例えば、すべての人種に対応できるよう、きわめて多くの色味を展開しているファンデーションや、男性の肌や好みに合わせた男性向けコスメラインの盛り上がりが見られます。また、そばかすなどの“欠点”を無理に隠さずに魅せるメイクの提案や、動物実験(アニマルウェルフェア)を行わない、人にも環境にも優しいオーガニックコスメへの関心の高まりも顕著です。
これらのトレンドの背景にあるのは、「時代の流れだから仕方なく」という消極的な姿勢ではなく、美を生み出す側と受け入れる側の両方が持つ「もっと自由に、ストレスを感じることなく美しさを楽しもう」「お互いを肯定し、それぞれの美しさを認め合おう」という、非常に前向きな決意ではないかと筆者は感じています。これはすなわち、どのような化粧品を選び、どのようにメイクを施すかという行為が、個々人の生き方や価値観と、より一層深く結びつく時代になったことを意味していると言えるでしょう。
🤩固定観念を打ち破るアメリカの自由な美意識とSNSの反響
閉店間際、セフォラから出ようとした時、筆者の目の前に突如として、信じられないほどカラフルな男女の集団が現れました。その中には、髪の毛、洋服、ネイルだけでなく、眉毛や口紅までを鮮やかな真っ黄色にしている女性や、全身を緑色で統一した男性、さらにはピンク色のツインテールに巨大なぬいぐるみを乗せた女性など、目を奪われるファッションとメイクの人々がいたのです。何かの撮影かと思って尋ねると、驚くことに「この店舗のスタッフの定例会議だよ」という返事が返ってきました。
まさか業務中にそこまで自由な格好をしているとは、さすがにびっくりしましたが、その鮮やかさと、自分らしくあることを堂々と楽しむ姿勢に、こちらまで明るい気持ちにさせられました。日本でも就職活動の際に推奨される「就活メイク」や、職場で好まれる「オフィスメイク」といった特定のメイクが求められる風潮がありますが、いつの日か、これほどまでにカラフルで自由な装いやメイクを、誰もが気兼ねなく楽しむことができ、社会全体に存在する窮屈な縛りが取り払われる日が来ることを願っています。このアメリカの多様な美しさの表現は、SNSでも「メイクはもっと自由でいいはず」「自分のためのおしゃれを肯定したい」といった共感を呼んでおり、特に若い世代を中心に、ジェンダーレスコスメやパーソナルカラーにとらわれないメイクへの関心が高まっているようです。
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