自動車業界がいま、100年に一度とも称される激動の変革期に直面していることをご存知でしょうか。トヨタ自動車グループの中核を担う部品メーカー、アイシン精機が打ち出した経営戦略は、まさに「不退転の決意」と呼ぶにふさわしいものです。2019年08月10日、同社の伊勢清貴社長は、これまでの成功体験に縛られない抜本的な構造改革への道筋を明らかにしました。
現在、アイシン精機は2020年03月期において、連結営業利益ベースで2期連続の減益を見込んでいます。これは同社の歴史の中でも極めて異例の事態であり、伊勢社長は「既存商品の選択と集中」を急ぐ必要があると危機感を露わにしています。SNS上では「あの巨大なアイシンがここまで危機感を煽るのか」「時代の変化が早すぎる」といった驚きの声が広がっており、業界全体の緊張感が高まっています。
伊勢社長が掲げる最大の課題は、限られたリソースを「CASE」と呼ばれる次世代領域へいかに再配分するかという点に集約されます。CASEとは、「Connected(つながる)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリング)」「Electric(電動化)」の頭文字を取った造語で、これからの車社会を支配する4つの重要なキーワードを指しています。
この新分野へ資金と人材を投入するため、アイシン精機は「聖域なきスクラップ・アンド・ビルド」を断行する構えです。これは、単に古い事業を切り捨てるのではなく、未来を構築するために必要な手段として位置づけられています。現場の社員に対しても、指示を待つのではなく自らやるべきことを探し出す前向きな姿勢が強く求められており、組織の体質改善が急務となっています。
その象徴的な出来事が、創業期からの「祖業」であるミシン事業や、長年親しまれてきたベッド事業からの撤退という重い決断です。ネット上では「アイシンのミシンがなくなるのは寂しい」と惜しむ声も散見されますが、企業が生き残るためには思い出さえも断捨離しなければならない冷徹な現実が、そこには反映されているのでしょう。
「分社」から「統合」へ!グループ一丸で目指すアフターマーケットの開拓
これまでのアイシン精機は、各事業の専門性を高めるために分社化を進めてきましたが、2020年03月期からは「グループ経営」へと大きく舵を切ります。2019年04月にはすでに変速機に関わる子会社を統合し、巨大な市場である中国でも営業拠点の一本化を完了させました。重複する管理部門を削減し、組織をスリム化することで、競合他社に打ち勝つ筋肉質な体制を目指しています。
今後の重点投資先として、伊勢社長は「電動化」を最優先事項に挙げています。これに付随して、自動駐車システムやブレーキ関連といった電動技術と密接に関わる領域を強化していく方針です。さらに注目すべきは、部品を販売した後の修理や点検を担う「アフターマーケット」分野への注力です。この領域はまだ開拓の余地が大きく、安定した収益源としての期待がかかっています。
個人的な見解を述べさせていただくと、アイシンのような巨大企業が自らのルーツを切り離す勇気を持ったことは、非常に評価されるべきだと感じます。多くの伝統企業が過去の栄光に固執して衰退する中で、痛みを伴う改革を断行するスピード感こそが、グローバル競争で勝ち残る唯一の処方箋なのではないでしょうか。この投資が数年後、どのような実を結ぶのか目が離せません。
将来の生存権を勝ち取るため、アイシン精機は試験研究費や設備投資を戦略的に増強していく一方で、間接部門の働き方改革による固定費抑制も徹底するとしています。2019年08月10日現在のこの攻めの姿勢こそが、ナゴヤ、そして日本のモノづくりを牽引し続ける原動力になるに違いありません。私たちは今、歴史的な産業構造の転換点に立ち会っているのです。
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