あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT(モノのインターネット)」という技術が、私たちの生活を支える物流の現場を劇的に変えようとしています。これは、離れた場所にある機械や商品の情報をリアルタイムで把握し、最適な制御を行う仕組みを指します。最近では、大手通信キャリアのNTTドコモがこの最新技術を駆使し、スマートフォンの配送効率を飛躍的に高めたことで大きな注目を集めています。
2017年12月より東京都江東区で稼働を開始した「東日本マーケティングロジスティクスセンター」は、ドコモの物流改革の象徴と言えるでしょう。ここでは約850ものドコモショップへ届ける製品を管理していますが、以前は深刻な課題を抱えていました。それは、ECサイトの普及などに伴う宅配ドライバーの不足により、将来的に商品が運べなくなるかもしれないという切実な危機感だったのです。
この難局を打破するため、ドコモは日立製作所のIoTプラットフォームを導入する決断を下しました。プラットフォームとは、膨大なデータを集約して処理するための共通基盤のことです。各店舗からの注文データに基づき、形や重さが異なるスマホやアクセサリー、カタログなどを、いかに少ない箱数で効率よく梱包できるかをシステムが瞬時に計算し、最適な組み合わせを導き出します。
驚くべきことに、このシステムによって1日あたり約2,500回行われていた店舗への配送回数が、約1,600回へと4割も削減されました。SNS上でも「配送がまとまれば受け取りの手間も減るし、環境にも優しい」と、この効率化を歓迎する声が上がっています。店舗スタッフにとっても、検品作業に追われる時間が減り、より丁寧な接客に力を注げるようになったのは大きなメリットでしょう。
中小企業の現場にも浸透する「見える化」の波
IoTの恩恵を受けているのは大企業だけではありません。千葉県浦安市にある溶接用副資材メーカーのスノウチでは、2019年1月より工場内の全機器をネットワーク化する試みをスタートさせました。これにより、これまでベテラン職人の「経験や勘」に頼っていた生産状況や在庫量を、誰もがひと目で把握できる「見える化」を実現したのです。
同社の従業員の約4割は、ベトナムやコロンビアなどから来日した外国人スタッフで構成されています。以前は作業の進捗説明において、言語の壁や個人の感覚による曖昧さが課題となっていました。しかし、データに基づいた客観的な数値を共有することで、基準が明確になりました。その結果、顧客からの納期に関する問い合わせに対しても、素早く正確な回答が可能になったと高く評価されています。
さらに、徹底したデータ管理は無駄な在庫の削減にもつながり、毎月の在庫量は5〜6%ほど減少したそうです。私個人の見解としては、こうした「職人の技」と「デジタル技術」の融合こそが、日本の製造業が生き残るための鍵になると確信しています。勘を否定するのではなく、それをデータで裏付け、誰もが働ける環境を作る姿勢は非常に先進的であり、素晴らしい取り組みです。
一方で、IoTを導入すれば全てが即座に解決するわけではありません。ドコモの担当者が語るように、収集した膨大なデータをいかに分析し、現場のオペレーションへ細かく反映させていくかという点では、まだ改善の余地があるようです。テクノロジーを導入して終わりではなく、現場の声を聞きながらシステムを育てていく継続的な姿勢が、今後さらに重要視されるでしょう。
深刻な人手不足が続く中で、物流コストの上昇は企業の利益を圧迫する大きな要因となっています。しかし、今回ご紹介した事例のように、IoTを賢く活用して効率化を突き詰めることができれば、それは他社にはない強固な競争力へと変わるはずです。デジタル変革が加速する2019年8月24日現在、物流の未来を担う技術の進化から、今後も目が離せません。
コメント