世界的に数少ないビオラのソロ奏者として、その名を知られているアントワン・タメスティさん。若くしてすでにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団といった、世界的な名門オーケストラと数多く共演を果たしており、その演奏は、まるで巨匠のような風格さえ漂わせています。彼が語るビオラの魅力は、何といっても**「色彩的な音色が表現できること」だそうです。他の弦楽器にはない、ビオラ独特の個性を、一人でも多くの聴衆に知ってほしいという熱い想いを抱いています。
ビオラといえば、オーケストラや室内楽には欠かせない存在の弦楽器ですが、バイオリンやチェロに比べると、ソロや主旋律を担う機会は多くありません。多くの場合、「内声部(ないせいぶ)」と呼ばれる、バイオリンとチェロの中間音域を担当する、どちらかといえば地味な役割が中心となります。タメスティさんは、この素晴らしい楽器の愛好家をもっと増やしたいという強い願いを胸に、精力的な活動を続けているのです。私自身の意見としましては、この「内声」こそが、楽曲全体を支え、深みを与える非常に重要な役割だと感じています。彼のソロ活動は、この地味な役回りというイメージを払拭し、ビオラの新たな可能性を切り開く、大変意義深い取り組みだと評価できます。
タメスティさんは、日本の世界的奏者である今井信子さんが1992年に東京で立ち上げた音楽祭「ヴィオラ・スペース」に深く関わっています。2013年からは、演奏曲目を選ぶ責任者である「プログラミング・ディレクター」を務めているのです。バイオリンに比べてビオラの楽曲は絶対的に少ないものの、「聴衆のために曲を選ぶのは楽しい作業だ」と強調しています。2019年5月下旬から6月上旬にかけて開催された、第28回となる同音楽祭では、欧州、アフリカ、南米など、世界各地のビオラ曲が演奏され、その多様な魅力を存分に伝えることができました。
ちなみに、2019年5月に即位された天皇陛下は、学生時代からビオラを愛好されていることで知られています。皇太子時代には、この「ヴィオラ・スペース」にもご来場されており、タメスティさんは陛下と言葉を交わした経験もあるそうです。「陛下がビオラをたしなまれていることは、大変心強く、世界の奏者にとっても大きな励みになる」と、喜びの表情を浮かべていました。このニュースはSNSでも大きな反響を呼び、「ビオラって地味なイメージだったけど、天皇陛下が弾かれてるんだ!」「タメスティさんの演奏も聴いてみたい」といった投稿が相次ぎ、ビオラへの注目度が一時的に高まった様子です。
タメスティさんは、最近も続々と新しい録音を発表しています。現代作曲家イェルク・ヴィトマンさんの「ヴィオラ協奏曲」を収めたアルバムをリリースしたほか、弦楽器三重奏によるJ・S・バッハの「ゴルトベルク変奏曲」という、非常に挑戦的な作品も発表しました。さらに、2019年8月には、日本の鍵盤奏者である鈴木優人さんと共演したバッハのソナタ集の発売も控えており、その精力的な活動には目を見張るものがあります。彼は、演奏する曲を通して、楽器の魅力とともに、何らかの「人間の物語」**を聴衆に届けたいという強い意気込みを語っています。彼の演奏が、これからもビオラの魅力を世界に広げ、人々の心に響く物語を紡ぎ続けていくことに期待したいですね。
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