2019年09月01日は「防災の日」でした。これに合わせ、各地で災害への備えが改めて見直されています。特に近年、関西圏でも急激に数を増やしているのが、都市の象徴とも言えるタワーマンションです。地上60メートル、20階建てを超えるこれらの大規模建築は、国の厳しい基準をクリアした高い耐震性を誇ります。そのため、多くの自治体は災害時に無理に避難所へ向かわず、自宅に留まる「在宅避難」を推奨しています。しかし、その華やかな暮らしの裏側には、高層建築ゆえの特有の課題が潜んでいることを忘れてはなりません。
最大の懸念は、停電によるエレベーターの停止です。もし巨大地震が発生しライフラインが途絶すれば、数十階もの階段を上り下りして水や食料を運ぶという過酷な現実が待っています。大阪市港区にある54階建てのマンションでは、管理組合の理事長を務める福田昌二さんが「上層階への物資リレー計画がうまく機能するか」と不安を口にしています。2006年の竣工以来、訓練を継続していますが、参加者の伸び悩みは深刻です。SNS上でも「タワマンの階段移動は地獄」「高層階ほど孤立するのでは」といった懸念の声が散見されます。
楽しみをフックに!住民を巻き込む防災の新潮流
防災意識の向上という壁に対し、独自の工夫で挑む現場もあります。大阪市福島区にある43階建てマンションでは、2019年08月上旬の訓練に夏祭りやマグロの解体ショーを組み合わせるという大胆な試みを行いました。単なる座学や訓練だけでは足が遠のきがちですが、イベント性を高めることで、子供から高齢者まで約400人もの住民が集まったのです。理事長の田中稔さんは、一人でも多くの関心を集めるためには、こうした地道な積み重ねこそが重要だと確信しています。こうした「楽しみながら備える」姿勢は、現代の都市生活における防災の理想形と言えるでしょう。
ここで改めて整理しておきたいのが、記事に登場する「長周期地震動」という専門用語です。これは、大規模な地震の際に発生する、ゆったりとした大きな揺れを指します。高層ビルはこの揺れと共振しやすく、長く大きく揺れ続ける特性があります。そのため、2019年現在の建築基準法では、高さ60メートルを超える建物に対しては、通常よりも遥かに厳しい安全基準での大臣認定が義務付けられています。つまり、建物そのものが倒壊するリスクは極めて低いのですが、だからこそ「建物が残った後の生活」をどう維持するかが問われているのです。
2018年09月の北海道地震では、実際に札幌市内のタワマンでエレベーターが止まり、住民が物資調達に奔走する事態が起きました。東京都中央区晴海などのタワマン密集地でも、住民の多くが「いざとなったら避難所へ行けばいい」と考えている現状があり、意識の乖離が指摘されています。専門家である千葉大学の小林秀樹教授は、管理組合が各戸を訪問してでも危機感を共有すべきだと警鐘を鳴らしています。ハードウェアとしてのマンションは頑丈でも、そこに住む人間同士の繋がりという「ソフト」が欠けていれば、災害時の孤立は防げません。
編集者の視点から申し上げれば、防災はもはや「義務」ではなく「マナー」に近いものへと変化していると感じます。スタイリッシュなタワマンライフを維持するためには、最新の備蓄だけでなく、隣に誰が住んでいるかを知るというアナログな繋がりが最強の防災デバイスになるはずです。景品やイベントをきっかけにしてでも、まずは顔を合わせる。その一歩が、2020年以降も増え続けるタワーマンション群を「真の安全地帯」に変える鍵になるのではないでしょうか。
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