2019年11月23日、世界が保護主義の荒波に揉まれる中で、一冊の注目すべき書籍が世に送り出されました。ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリース博士による本作は、かつての中曽根康弘氏や大平正芳氏といった指導者が築いた日本の国際化の歴史を背景に、現代の日本が直面する貿易政策の深層を鮮やかに描き出しています。著者が中学生時代にメキシコで出会った大平首相の言葉は、時を超えて彼女の東アジア研究の原動力となりました。
SNS上では「これまでの日本の消極的なイメージが覆された」「今の自由貿易を支えているのは日本かもしれない」といった、驚きと期待が入り混じった投稿が相次いでいます。確かに、以前の日本は外圧に屈して市場を開放する「受動的な国」という印象が強いものでした。しかし本書は、環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめとする広域経済連携を牽引する現在の姿を、自律的な「貿易国家」への脱皮であると肯定的に捉えています。
自由化が直面する二つのジレンマと日本の決断
貿易自由化を推し進める過程では、避けて通れない「ジレンマ」が二つ存在するとソリース氏は指摘します。一つ目は、自由化が深まるほど既得権益を持つ勢力の抵抗が強まり、国民的な合意形成が困難になるという政治的な壁です。二つ目は、競争に晒される産業を保護するための「補助金」と、産業構造を変革するための「改革」のどちらを選択するかという苦渋の決断です。これらは、まさに政治家が現実的な解を模索する際の最大の難所といえるでしょう。
ここで解説が必要なのが「既得権益」という言葉です。これは、過去の制度や慣習によって特定の個人や団体が持っている法的・経済的な権利を指します。例えば、高い関税で守られてきた農業などがその典型ですが、これを撤廃することは短期的には痛みを伴います。日本は農業ロビー団体の根強い影響力を受けつつも、政策の司令塔を機能させることで、従来の守りの姿勢から攻めの姿勢へと劇的な転換を図りました。
私は、この日本の変貌こそが、停滞する国際社会における唯一の希望の光であると確信しています。トランプ政権が「アメリカ第一主義」を掲げて多国間交渉から背を向ける中、日本がルールに基づいた自由貿易の原則を死守しようとする姿勢は、国際秩序の崩壊を防ぐ防波堤となるはずです。補助金に頼り切るのではなく、痛みを伴う改革に踏み切った日本の覚悟は、他国が模範とすべき非常に勇気ある決断ではないでしょうか。
本書は、欧州や中国とも新たな貿易の枠組みを構築しようとする日本の「ハブ(中心)」としての役割を強調し、未来への指針を示しています。2019年11月23日というこの時期に、世界経済の舵取り役としての日本の使命を再認識することは、私たち市民にとっても極めて重要な意味を持ちます。単なる経済論に留まらず、日本が国際社会でどう生き抜くべきかを問う本作は、まさに今の時代に読まれるべき必読の書と言えるでしょう。
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