フィリピンの経済界を牽引してきた偉大なリーダーたちが、相次いでその生涯を閉じました。2019年11月09日、国内第3位の規模を誇る巨大財閥「JGサミット・ホールディングス」の創業者、ジョン・ゴコンウェイ氏が93歳で逝去されました。2019年01月に亡くなった最大財閥「SMインベストメンツ」のヘンリー・シー氏に続く訃報となり、まさにフィリピン経済にとって一つの時代の区切りを迎える節目の年となったのです。
SNS上では、一代で強大なビジネス帝国を築き上げた彼らの功績を称える声が溢れています。「不屈の精神を持った開拓者だった」「フィリピンの近代化は彼ら抜きには語れない」といった熱いメッセージが寄せられ、その影響力の大きさが改めて浮き彫りとなりました。マニラで執り行われたジョン氏の通夜にはドゥテルテ大統領も参列し、国家的な損失としてその死を深く悼んだことが伝えられています。
ジョン氏は中国からフィリピンへ渡り、1954年に起業した苦労人です。食品事業を皮切りに、銀行、不動産、航空、さらには石油化学まで、驚くほど幅広い分野へ進出を果たしました。現地メディアからも「最も多角化に成功した財閥」と絶賛されています。特定の事業に依存せずリスクを分散し、成長領域をどん欲に開拓するその経営スタイルは、島国であるフィリピンの経済発展における理想的なモデルケースといえるでしょう。
ここで注目すべきは、フィリピンの「財閥」という仕組みです。これは少数の有力家系が多角的に企業を支配する形態を指し、国家経済の根幹を支えています。歴史あるスペイン系のアヤラ財閥が既に7代目を数えるのに対し、ジョン氏やヘンリー氏は戦後の混乱期に自らの腕一本で道を切り拓いた「創業者世代」でした。ゼロからこれほどの規模を作り上げた彼らのカリスマ性は、比類なきものだったに違いありません。
スムーズな世代交代と高学歴な第2世代への期待
創業者の逝去による経営への混乱を心配する声もありますが、JGサミットの体制は既に揺るぎないものとなっています。長男のランス・ゴコンウェイ氏は2002年に社長へ就任し、2018年からは最高経営責任者(CEO)として全権を掌握していました。CEOとは企業における経営事項の最高責任者のことで、実務と意思決定の両輪を担います。準備万端でバトンを渡された新体制には、市場からも厚い信頼が寄せられています。
同様に、SMインベストメンツも承継は極めて円滑です。ヘンリー・シー氏は生前から、長女のテレシタ・シー・コソン副会長をはじめとする6人の子供たちに経営を委ねてきました。彼ら第2世代の多くは海外留学を経て国際的な感覚を養い、いわゆる「帝王学」を徹底して学んでいます。叩き上げの創業世代とはまた異なる、洗練された戦略的な経営手法がこれからの財閥を形作っていくことになるはずです。
私個人の見解としては、この世代交代こそがフィリピン経済がさらに成熟するための試金石になると考えています。過去には代替わりを機に衰退した財閥も存在しますが、グローバルな知見を持つ今の若きリーダーたちなら、デジタル化や国際競争の荒波を巧みに乗り越えていけるでしょう。創業者の情熱を引き継ぎつつ、新しい感性で財閥のかじ取りを行う彼らの手腕には、大いなる期待を抱かずにはいられません。
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