私たちの日常において、氏名や住所、行動履歴といったデータは、今や企業にとって「宝の山」とも言える価値を持っています。しかし、その扱いを誤れば個人の尊厳を傷つけかねません。そこで重要な役割を担うのが、2016年1月1日に設立された「個人情報保護委員会」です。内閣府の外局として誕生したこの組織は、独立した強い権限を持ち、企業のデータ運用を厳格に監視する、いわば情報の番人といえる存在でしょう。
委員会は、国会の同意を得て選出された委員長を含む9名のプロフェッショナルで構成されています。特定の行政組織の影響を受けにくい「三条委員会」としての性質を持ち、公正取引委員会と同様に高い独立性が保たれているのが特徴です。もし事業者に不正の疑いが生じた際には、直接オフィスへ立ち入り検査を行うなど、その是正に向けて迅速かつ強力に動き出します。
「指導」と「勧告」はどう違う?違反への厳しい行政処分
個人情報保護法に抵触する恐れがある場合、委員会はまず「指導」を行います。これは法の趣旨を理解させ、改善を促すソフトなアプローチです。しかし、法律違反が明白なときには、より重い「勧告」という刀が抜かれることになります。2019年8月26日には、就活生の同意を得ずに「内定辞退率」を販売していたリクルートキャリアに対し、この重い勧告が下されました。
通常、指導の段階では企業のプライバシーに配慮して公表されないケースも多いですが、社会的な影響が甚大な場合は例外です。例えば、数千万人規模のデータ流出を招いた米フェイスブックや、顔情報の収集方法が問題視されたジャパンタクシー、さらには他人の情報が表示される不具合を起こしたアマゾンジャパンなども、その悪質性や影響力から厳しい指導を受けた事実が公表されています。
編集部が斬る!信頼を売る企業に求められる倫理観
SNS上では「便利さと引き換えにプライバシーを売っている気がする」といった不安の声や、「リクナビの件は許せない」という怒りの投稿が目立ちます。利便性の向上は喜ばしいことですが、個人の尊厳が二の次にされる現状には、私自身も強い危機感を抱いています。企業は単に法律を守るだけでなく、利用者の信頼を裏切らないという倫理観を経営の真ん中に置くべきではないでしょうか。
行政処分の実績を振り返ると、2018年10月22日のフェイスブックへの指導を皮切りに、IT大手への監視の目は年々厳しさを増しています。2019年12月05日現在、デジタル化が加速する中で、個人情報保護委員会が果たす役割はますます重くなっています。私たちユーザーも、自分のデータがどう扱われているのか、より関心を持つ必要があるでしょう。
コメント