東京都葛飾区に校舎を構える東京都立農産高等学校では、生徒たちの熱気あふれる実習が行われています。2019年11月25日、食品科の2年生10名が取り組んでいたのは、日本の食文化の原点ともいえる「味噌づくり」の工程です。1年という長い歳月をかけて完成させるこのプロジェクトは、まさに職人の世界そのものといえるでしょう。
今回の実習で行われたのは、製造の第1段階である「製麹(せいきく)」という非常に重要な作業です。製麹とは、蒸した米に「麹菌」という微生物を付着させ、繁殖させるプロセスを指します。この麹菌が米の成分を分解して甘みや旨みを作り出すため、味噌の出来栄えを左右する心臓部とも呼べる工程なのです。
目の前に積み上げられたのは、実に60キログラムにも及ぶ蒸し米の山でした。生徒たちは一斉に手を伸ばし、米と麹菌を混ぜ合わせる「手入れ」に没頭します。参加した生徒からは「想像していたよりもずっと力が必要だ」という驚きの声が漏れるほど、その作業は全身を使う重労働であることが伺えました。
受け継がれる伝統と「失敗できない」という覚悟
作業の合間には、1年前に当時の先輩たちが仕込んだ「先輩の味」を試食する場面も見られました。完成した味噌の芳醇な香りに触れた芦田優太さんは、思わず笑みをこぼします。「この味が待っていると思うと、やる気が湧いてくる」と語る一方で、自分たちの手で伝統を繋ぐという責任感から、表情を引き締める場面が印象的でした。
SNS上でも、こうした高校生のひたむきな姿に対して「自分たちで1年かけて作るなんて贅沢」「若いうちから発酵文化を学べる環境が素晴らしい」といった感動の声が広がっています。効率重視の現代において、時間をかけて微生物と向き合う彼らの姿勢は、多くの大人たちの心にも響いているようです。
編集者の視点から見れば、このように五感を使って「食」を学ぶ経験は、何物にも代えがたい財産だと確信しています。単なる知識としての発酵ではなく、重い米を混ぜる筋肉の痛みや、熟成された味噌の香りを体感することで、食べ物への感謝が深まるはずです。彼らが作る「今年の味」がどう仕上がるのか、期待せずにはいられません。
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