2019年11月13日現在、日本列島に甚大な被害をもたらした台風19号の通過から約1カ月が経過しました。しかし、私たちの生活基盤である電力インフラには、未だに深い爪痕が残されているのをご存知でしょうか。
東北電力管内である東北地方の6県と新潟県を合わせると、なんと延べ14万4724戸もの家庭で停電が発生しました。SNS上でも「スマホの充電ができず情報が絶たれて不安だ」「冷蔵庫の食材が全てダメになってしまった」といった悲痛な声が次々と投稿されており、現代社会における電力の重要性を痛感させられます。
復旧に向けて最大3500人という大規模な人員が投入されたものの、土砂崩れなどで道路が寸断された地域では作業車両が入れず、事態の収拾は困難を極めました。宮城県内では2019年11月2日まで停電が長引いた地域もあり、福島県須賀川市や浪江町などの一部地域では、2019年11月12日時点でもいまだに暗闇での生活を強いられている方々がいらっしゃいます。
地震対策の影で遅れていた「水害」への備え
なぜこれほどまでに被害が拡大してしまったのか、その背景にはこれまでの防災対策の偏りがあります。日本は地震大国であるため、東北電力も電柱を地中に深く埋め込んで揺れに耐えうる補強を施すなど、地震への備えは重点的に進めてきました。しかし、近年激しさを増している大雨や暴風への対策は、決して十分とは言えない状況だったのです。
実際に今回の台風では、土砂崩れなどの影響で合計766本もの電柱が倒れたり傾いたりする甚大な被害が生じました。電力会社の担当者も「土砂崩れによる被害は二次的なものであり、大雨単体での影響は限定的だと見積もっていた」と率直に語っており、水害に対する危機管理の甘さが露呈した形だと言えるでしょう。
無電柱化の推進とこれからの日本のインフラ課題
専門用語で「無電柱化」という言葉がありますが、これは電線や通信ケーブルを地下空間に埋設し、地上から電柱をなくす取り組みを指します。景観の向上だけでなく、台風や地震によって電柱が倒壊して道路を塞ぎ、救助活動を妨げるリスクを劇的に減らすことができるため、防災面でも非常に有効な手段とされています。
経済産業省は2019年10月に、相次ぐ台風被害を受けて緊急の中間整理案を発表しました。そこでは、送電鉄塔や電柱の強度に関する技術基準の抜本的な見直しや、先述した無電柱化の強力な推進などが明記されています。東北電力側も国の議論を注視しながら対策を講じていく姿勢を示していますが、インフラの強靭化はまさに待ったなしの急務です。
インターネットメディアの編集者として私は、電力会社にすべての責任を押し付けるのではなく、国や自治体を含めた社会全体でインフラ整備のコストをどう負担していくのか、真剣に議論すべき時期に来ていると感じます。気候変動によって過酷な災害が毎年のように起きる時代に突入した今こそ、過去の常識を捨てて新しい防災のあり方を模索しなければなりません。
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