2019年12月08日、令和最初となる年末年始の旅行予約状況が明らかになりました。関西を出発点とする旅行市場では、これまでの定番だった旅先に大きな地殻変動が起きています。特に注目すべきは、近隣諸国への旅行動向が政治情勢や社会情勢によってダイレクトに影響を受けている点でしょう。
長らく不動の人気を誇った韓国ルートですが、JTBでは前年比6割減、阪急交通社でも4割減と大幅な落ち込みを見せています。これは2019年7月から始まった半導体材料の輸出管理厳格化に端を発し、韓国国内で日本製品の不買運動が激化したことが背景にあります。航空各社が路線の縮小を余儀なくされている現状が、数字となって如実に表れました。
また、民主化デモによる政情不安が続く香港も、JTBの予約が8割減という厳しい局面を迎えています。SNS上では「今の香港に行くのは勇気がいる」「韓国旅行の代わりにどこへ行こう」といった、安全性を懸念する声や代替案を探す投稿が相次いでおり、旅行者のマインドが急速に冷え込んでいる様子が伺えます。
「台湾シフト」と「長期連休」がもたらす欧州・オセアニアへの熱視線
一方で、韓国や香港を避けた旅行者の受け皿となっているのが台湾です。阪急交通社では前年比で約5割も増加しており、近畿日本ツーリスト関西でも航空券の確保が困難なほどの活況を呈しています。親日的で食文化も豊かな台湾は、リスクを避けつつ手軽に海外を楽しみたい層にとって、今最も「熱い」デスティネーションと言えるでしょう。
今回の年末年始は最大9連休という日並びの良さも手伝い、遠方への旅行も好調です。JTBではイタリアのローマを巡る周遊ツアーが1割増、近畿日本ツーリスト関西ではオーストラリアを中心としたオセアニア方面が2倍もの伸びを記録しました。フライト時間の長い地域でも、まとまった休みがあれば積極的に足を運ぶ旅行者の意欲が感じられます。
しかし、国内旅行に目を向けると、JTBと近畿日本ツーリスト関西の双方が前年を下回る結果となりました。2019年4月から5月の10連休で既に旅行を楽しんだ反動に加え、10月の消費増税が家計に影を落としています。「消費マインドの低下」という言葉通り、財布の紐を締める傾向が国内レジャーにおいて顕著に出ているようです。
編集者としての視点ですが、近年の旅行選びは単なる「安さ」や「近さ」だけでなく、現地の治安や政治的リスクを慎重に見極める「リスクヘッジ型」へ移行していると感じます。SNSで現地のリアルタイムな情報が手に入るからこそ、少しでも不安があれば即座に候補地を変更する、現代の旅行者の賢明かつシビアな判断が今回の結果に繋がったのではないでしょうか。
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