2019年11月末、米国では例年通り「ブラックフライデー」という大規模な年末商戦が幕を開けました。この時期、アドビ・アナリティクスの調査によれば、オンラインで注文した商品を実店舗で直接受け取る金額が、前年比で43パーセントも急増したという驚きのデータが発表されています。
この現象は、実店舗が単なる「買い物をする場所」から、ネット注文品を回収する「ピックアップ拠点」へと進化していることを示唆しているでしょう。日本でもユニクロなどが同様のサービスを展開しており、配送料を節約できる利点から、多くの消費者に支持され始めているようです。
特筆すべきは、米国で急速に普及している「ドライブアップ」や「カーブサイド」と呼ばれる受け取り形態です。これは、店舗の中まで入ることなく、店の駐車場に車を停めたまま商品を受け取れるサービスを指します。ウォルマートやターゲットといった大手小売店が、こぞってこの仕組みを取り入れています。
SNS上では「子供をチャイルドシートから降ろさなくて済むのが神すぎる」「雨の日に重い荷物を運ばなくていいのは助かる」といった絶賛の声が相次いでいます。実際にこのサービスを体験してみると、想像を遥かに超える快適さに、誰もが驚きを隠せないのではないでしょうか。
GPS連携が生み出す「拍子抜け」するほどの圧倒的スピード感
例えば2019年12月のある日、人気の調理器具「インスタントポット」を購入しようとした際のエピソードです。アプリで注文を済ませると、わずか数分後には「商品の用意ができました」という通知が届きました。郵送では1週間かかると言われた商品が、ものの30分で手に入る計算です。
さらに驚くべきは、GPS(全地球測位システム)を活用した店舗側の対応力でしょう。GPSとは、衛星からの電波を受け取り、現在地を特定する技術のことです。これを利用して、顧客が駐車場に到着した瞬間に店側がそれを察知し、スムーズな受け渡しを実現しているのです。
専用スペースに車を停めると、1分もしないうちに店員が現れ、商品をトランクへ積み込んでくれました。車から降りる必要すらなく、あとはそのまま走り去るだけという簡便さです。この摩擦のない「顧客体験(UX)」の向上こそが、現代の小売業における勝ち筋だと言えるはずです。
店舗側の視点に立てば、既存の駐車場を活用するだけなので、大掛かりな設備投資を必要としない点も大きなメリットでしょう。窓口を新設する必要もなく、スマホアプリと数台分の駐車スペースがあれば、すぐにでも「ドライブスルー」機能を付加できるのです。
楽天も注目する「ラストワンマイル」を埋める新たなソリューション
こうした動きを加速させているのが、2018年に楽天が買収した「カーブサイド」のようなスタートアップ企業です。現在は「Rakuten Ready」と名を変え、ノードストロームやピザハットといった多様な業種に対し、店舗受け取りのシステムを提供しています。
私は、この「店舗の一歩手前」でサービスを完結させるという発想に、未来の商取引のヒントがあると考えています。一見すると小さな手間に思える「入店してレジに並ぶ」という行為を排除したことが、忙しい現代人のニーズに完璧に合致したのではないでしょうか。
特に生鮮食料品を扱うスーパーなどでは、仕事帰りに車で立ち寄るだけで夕食の材料が揃う利便性は計り知れません。デジタルとアナログが融合したこの「ドライブアップ」という文化は、日本の都市郊外や地方においても、今後爆発的に広がる可能性を秘めていると確信しています。
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